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「そこまで拒否されると、いくらわたしでも傷付くんですけど……」
「そ、そんなことを言われてもだね……」
「別にいいですけど」

ぱっと手を離し前を向く。隣で彼がどんな顔をしているのかはわからないが、戸惑っているのは雰囲気で分かった。まさかこんなに早く引くとは。そんなところだろう。彼が小さく安堵の溜息を吐いたのを見計らうと、わたしは立ち上がり彼の前に立った。そして彼が身構えるより早くネクタイを掴み、自身の方へ彼の顔を引き寄せる。キスをされると思ったのか固く目を瞑る大の男に吹き出し、わたしは他に何をするでも無く言い放った。

「好きだなぁって思ってただけですよ。当たってました?」

おずおずと目を薄く開き、うんざりとしたように眉間にシワを寄せわたしから目を逸らす福添。すると彼は小さく「……あぁ」と呟きこちらをチラリと見遣った。

「福添さんも段々わたしの事が分かってきたみたいですね」
「そうか……。でも君の方はどうなんだ?私のことをあまり分かっていないようだが」
「福添さんのことを?例えば?」

「まず私が男であるということも分かってないだろ」
「まさか」
「どうかな」

首を傾げる。瞬間、彼は私の襟首を掴むと自身の方へと思い切り引き寄せた。グイと強い力でバランスを崩したわたしは彼の胸へと飛び込んでしまい、背中に手を回され抱き締められる形となる。まさかの行動に驚いていると彼はわたしの耳元に唇を寄せて言った。

「君の力では私には敵わない」
「……!」

直接的に耳に入った彼の少し低い声は、わたしの体を熱くさせるには充分で。カッと熱をもつ頬に右手を添え、目を見開き目の前の悪戯に笑う男をみつめていると、彼はわたしの肩を少し押して立ち上がった。そしてわたしの左手を掴み。次の展開に期待してしまうわたしの胸中を知ってか知らずか、彼は口角を上げ。わたしの左手を引いて後ろを向かせると。

 そのままわたしの左手を背に回し捻り上げた。

「いたたたたたたた!!はなっ、離してくださっ……!ちょ、いだだだだだだだだだだ!!なにするんですかっ!!」
「あまりにもしつこいから少し痛い目にあわないと分からないかと思って」
「こんなのただの暴力じゃないですか!」
「君がやってることも逆セクハラだ」
「ごめんなさい反省しますから離してからくださいぃ〜!痛い〜」

パッと手を離され、解放されたわたしは肩で息をしながら床に倒れ込む。振り向いた時には福添は階段を降りており。

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Shirome - あなたの書いた福添さんが見たいです! (2022年8月2日 4時) (レス) @page36 id: 57feb98294 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サインバルタ | 作成日時:2019年11月10日 5時

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