【ラブライブ】あの娘と僕【男装】 (ページ18)

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そして、ある程度経った頃。凛は「もう大丈夫だよ」と、Aの腕から降りた。実際、Aはそろそろ限界に達していたため、丁度よかったのだ。

降り立った凛は、Aの腕を掴み、そのまま自身の腕を絡ませる。

そんな彼女にAはフと笑うと、彼女の頭を撫でた。

「にゃ〜」

頭を撫でられながら、凛は考える。

そういえば、何か大事なことを忘れている気がする、と。

そして、歩きながら思い出そうと思考していると、Aが言った。

「そういえば凛ちゃんは何で僕のことを待っていたの？」

その言葉で、ようやく凛は思い出す。

「にゃーーーーーー！！そうだAちゃん、月が綺麗ですね！」
「えっ？曇ってるけど……」
「にゃっ！！？」
「ふふ、変な凛ちゃん」

クスクスと笑うAに、がっくりと肩を落とす凛。

その様子を見てか、Aは「まぁまぁ」と彼女を宥める。

「僕に月を見せたかったの？」
「うーん、そうなんだけど、そうじゃなくて……」

もごもごと言い淀む彼女に首を傾げる。

すると、やがて凛の家が見えてきて。

凛はハッと目を見開いた。

(うう、折角一番にAちゃんを見つけられたのに……)

せめて、何か伝えたいと思った凛は、玄関の前に立つと、意を決してAの方へと振り向いた。

その時。

Aが立っていたその背後に、大きな月が雲から顔を出していて。

そのやわらかな白い光が、Aを逆光で妖しく照らす。

「っ、Aちゃ、月が！綺麗だよ……！」
「え？」

聞き返すとともに、薄く笑みを浮かべる彼女に、凛は見惚れる。

そして、凛に促されるままに月を見上げると、彼女は「本当だ……」と、しみじみ呟いた。

「これが見せたかったんだね？」
「う、うんっ！」

嬉しくて。

凛は思わずAの胸へと飛び込む。

「えっ、ど、どうしたの？」
「ふふ、なんでもないよー！」
「……仕方ないなぁ」

余程凛が可愛いと思ったのだろう。

今までと違って、ぐしゃぐしゃと掻き乱すように凛の頭を撫でた。

「あ、ごめん、つい」
「いいよー、もうお家だもん」
「あぁ、そっか。……それじゃ、また明日ね」
「うんっ！」

彼女は、小走りで凛の家から去って行く。

一方凛はというと、彼女に強くぐしゃぐしゃと撫でられた、熱を持つ頭に触れ。

ため息をついた。

「Aちゃんって、あんな顔で笑うんだぁ……」

思い出されるのは、月明かりに妖しく照らされる彼女の、大人で、妖艶な笑み。