第45話 ページ46
Aがふと目を覚ますと、だだっ広い野原にいた。
空は抜けるように青くて、雲一つない。
辺りを見渡すと、少し離れた所にペトラがいた。
「ペトラ！」
声をかけて駆け寄ろうとしたが、ペトラが手で制した。
「どうせ近寄れないから、そこにいなよ」
そう言われた。
何故かその言葉に従ってしまい、近づこうとするのをやめると、ペトラは微笑んだ。
「少し、話さない？なんでもいいよ。何でも聞く。Aと話がしたくて来たの」
そう言ったペトラに何かが崩れるように色んな言葉が飛び出した。
言いたい事は沢山あった。
リヴァイとの事。
病気の事。
でもどれも言葉がうまくまとまらなかった。
それでもペトラはうんうん頷いて聞いていた。
「それで？他には？」
「他には…ない」
もう話しつくしてしまった。
もっと言いたい事があったはずなのに。
実際言葉にするととっても少ない。
「…でもね。今話したことよりももっと伝えたい事があるんだ」
「なに？」
「私が、ペトラの事が大好きって事」
そういうとずっとニコニコしていたペトラは目を見開いて、そのあと。
そのあと。
-------------
「……」
Aは病室で目を覚ました。
さっきまで見ていた夢を思い出しながらゆっくり息を吐く。
昨日、壁外調査から返った調査兵団の凱旋に行った父が言った。
「ペトラが死んだ」と。
(父さんも母さんも、とても悲しんでる。私も…悲しい。けど)
兵士として暮らしていた自分は、どこかで近しい誰かが死んでしまう覚悟をずっとしていたのか。
悲しいながらも落ち着いていた。
(もっと悲しいと思ってた。声が枯れるほど泣くと思ってた。……違うか。きっと私はそれを超えて無気力なんだろうな)
すると母親が病室に入ってきた。
「おはよう。やっと起きたの？もうお昼前よ？何か食べられる？」
「…ごめん。いらない」
ペトラが死んで、Aは入院中。
本格的に体調が悪くて、入院してから起きている時間の方が少ない。
両親には心配ばかりかけている。
しばらくしてリンゴだけを持ってきた母親だったが、Aはベッドから起きずにいた。
「…ねえ。ペトラって、リヴァイ兵長の事が好きだったのかしら」
「……」
「手紙を読んでるとそんな気がしてね。調査で死んでも、リヴァイ兵長のせいじゃないって、毎回書いてあったの」
「……」
ずっと黙っているAに、母親は懐かしむように悲しそうに微笑んだ。
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作者名：ララ | 作成日時：2020年12月26日 2時
