第38話 ページ39
手を強く握られたAは、ただ困惑してリヴァイを見る。
「それと勘違いしている部分を訂正したい。そもそも、病気で先に死ぬかもしれない云々じゃなく、何があっても俺は必ずお前よりも生きてやる。俺よりも先に死んでくれ」
リヴァイは真剣な面持ちだった。
「…兵長?」
「お前にその気がないなら結婚はしなくていいと思ってたんだ。病気の事で人と深くかかわらない様にしている事に勘づいていたからな。だが今回お前が倒れた時、俺は家族じゃないから病室にも入れてもらえなかった」
「…」
「お前の死に目に会えねぇのは嫌だ。だから結婚してくれ。俺は壁の外では死なない。お前が壁の外で死のうが内で死のうが、お前を看取るのは俺だ。俺より後に…俺のいない所で死なないでくれ。俺の見ていない所で死なないでくれ」
「…はははっ、変なプロポーズ。先に死ねって…両親が聞いたら怒りますよ」
Aは吹き出す。
リヴァイも少し笑った。
少し張り詰めていた空気が和らぐ。
Aは少し笑った後に一息ついた。
「ありがとうございます。…とても嬉しいです。私も兵長の事が好き、です、から」
「…そうか」
「でも」
その言葉にまたリヴァイが目を見張る。
「もう少し落ち着いたらでもいいでしょうか。今はとてもバタバタしていますし。あと…ペトラにも話をしなくちゃ」
ペトラへの報告…と言っただけで色々と理解したリヴァイは「そうだな」とだけ返した。
「それに明日にはまた働けそうなので。幸いにも怪我はなかったみたいですから」
「は?お前、まだ兵士をやるつもりか?」
「ええ。勿論です。死ぬ時期を考えながら生きるのは本当に辛いので。でも安心してください。もう遺族見舞金とかそういうのは考えない事を約束します。今飲んでいる薬で、生きられるまで生きていきますから」
Aはさっきまでとは比べ物にならないような笑顔を向けた。
そしてずっと握られたままのリヴァイの手を外そうとしたが、また強く握られる。
「おい。それだと今回みたいなことがあった場合の解決にならないだろうが」
「その辺は上手い事かかりつけ医に言っておきます」
「なら恋人だ。これ以上譲らねえ」
「わ、分かりました。よろしくお願いします」
こうして、とりあえずリヴァイとAは恋人関係になった。
ただ、ペトラに話すタイミングを計りたい事から、表向きでは今まで通り同僚で過ごすことにする事に決めたのだった。
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作者名:ララ | 作成日時:2020年12月26日 2時