第31話 ページ32
そうしてしばらく談笑していたが、不意にAがリヴァイの足元の紙袋を見た。
「あの。申し上げにくいのですが…その花」
本当はもっと早く渡したかったのだが、タイミングがなくて渡せず足元に置いていた花束をAが指さす。
「…そうだ。お前が元気だから渡しそびれる所だった。…とはいえ、山ほど貰ってるようだがな」
リヴァイは彼女の後ろに並べられた幾つもの花束を見ながら渡すと、Aはお礼をいって受け取った。
「同期達も来てくれて。訓練兵時代の問題児の私が怪我したって聞いて面白がってるんですよ」
「そうか。表向きには怪我ってことにしてるんだったな」
「でも沢山もらったからって嬉しくない訳ではないですよ!ご迷惑をおかけしたのは私なのに、重ね重ね気を使わせてしまって申し訳ありません」
恭しく花を受け取ったAに、直前まで渡すかどうか悩んでいた物をリヴァイは差し出す。
何も言わずにそれをテーブルに置かれたAは、黙ってそれとリヴァイを見比べた。
「これは一体?」
「チケットだ」
「チケット、」
それは何かのチケットには見えず、手書きで日付が書いてあるだけで演目などが書かれていない紙の切れ端だった。
100歩譲ってチケットだとしても、むしろ演目を見に行ったときに返される半券に見えた。
「これは工房の利用ができるチケットだ」
「工房?」
Aが顔を上げる。
「市街地の裏道に、小さい工房があってな。俺がカップを特注で作ってもらったことがある。そこの店主に掛け合って、1日工房を貸してもらえることになった。お前が造形やなんやらが好きだと耳にしたからな。そこで皿でもなんでも1日作るといい」
「ええっ」
控えめに驚いた声を出したAだが、彼女には珍しく耳まで真っ赤にして興奮した顔をする。
その顔を見ているとリヴァイも胸の奥がツンとしたが堪えた。
「い、い、いいんですか!?」
「ああ。材料も俺がもってやる」
「それはちょっと悪いなぁ」
「飯の代わりだ。飯食って酒飲むことを考えたら安いもんだ。飯は嫌なんだろう」
「嫌ってわけじゃ無くてですね…」
まごつくAにリヴァイは予約券を押し付ける。
「なら俺も行く。いいな。来週だ。非番の申請を出せ」
流石にここまで押されては断り切れず、Aは頷いた。
「あの、ペト「ペトラがどうこうじゃねえ。お前と2人だ」
きっぱりとそういったリヴァイは約束だけ取り付けて退室した。
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作者名:ララ | 作成日時:2020年12月26日 2時