「コートの外でも繋がれる」 ページ9
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「…A、ほんまにもうバレー出来んの?」
「おん」
侑の問いかけに、Aは間髪入れずに答えた。
こればかりは、どうしようもないことやから。
「俺らがAを頼りすぎたからやんな…」
「ほんまごめん」
自分たちがずっとAをコートに立たせてたからだ。
自分たちが目の前の勝利ばかりを気にして、仲間のことを見れていなかった。
と、2人が同時にAに頭を下げる。
「(あ、あかん…同じ顔で謝らんといて…!)」
シュールすぎてAは思わず吹き出してしまった。
「な、なんで笑うねん!」
「せや!俺らは真剣に…」
「俺は2人のせいやなんてちーっとも思うとらんよ。俺の自己管理が甘かっただけや。それだけ」
「やけど…!」
口を挟もうとする侑の言葉を遮るように、Aは言葉を続けた。
「それにな、バレーってコートの上だけで繋ぐんちゃうねん。コートの外でもバレーと繋がれるってことに気付いたんや」
「コートの、外」
今度は侑の反対側に座る治が、Aの言葉を復唱する。
「そら、中でプレー出来たら1番楽しいかもしれん。でもな、中でプレー出来るんは周りの支えがあるからやって痛感したんやわ」
そう言うと、Aはすっくと立ち上がって、2人と向き合う形になった。
「(2人共背高いから見下ろすことあんまないやんな〜。ええ機会や。今のうちによう見下ろしとこ)」
「Aはどうしてるん?部活、入っとるんやろ?」
「おん、マネージャーしよる」
「稲荷崎にはおらんわ」
「あー、あれやろ。どうせ2人のファンばっかなんやろ」
「あいつらうっさいねんもん」
2人が女子の黄色い歓声を浴びるのなんて日常茶飯事やもんなーと思うとともに、山本にドヤされそうやなーとも思う。
なんや、2人とも全然変わっとらんやん。懐かしい。
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作者名:まるすけ | 作成日時:2021年12月30日 0時