君の消えた世界

また明日/江戸川乱歩 ページ5

「A〜！」


「今日も来てくれたんですね」


清潔な空間…独特の匂い……そう、此処は病院だ
身体の弱い私は、依頼中に起こったマフィアとの交戦で無理をし、体調を崩して入院中…

皆…特に乱歩さんは、毎日の様に病院へ来てくれる


「お仕事はいいんですか？」


「もー終わったの！」


「流石は乱歩さんですね」


窓外を眺める……病院って退屈だなぁ


「君今退屈だなって思ったでしょ？」


「え⁉」


「君の事なんて眼鏡をかけずともすぐ判る！君は単純だからね！」


「クスクス…本当、乱歩さんには敵わないですね」


少し考え込んだ乱歩さんは…そうだ！と手を打つ


「ならAが退屈しない様に今日の事件の話を聞かせてあげよう！」


「いいんですか？」


「勿論！今日の事件はね、庶民の君達からしたら摩訶不思議な事件だった…まぁ僕に言わせれば……」


事件の内容を楽しそうに語る乱歩さん

この時間が永遠ならいいのに……



"…辛いと思うけど"


"先生……余命より、随分長生きしました…だって私もう24ですよ？余命から8年…もう充分です"






「痩せたか？」


デリカシーのない事を言う国木田を、与謝野が殴る


「乱歩さんは？」


「仕事って言ってましたよ」


「…何でも、Aさんとの話が尽きない様にだそうです」


谷崎と敦が説明する…そっか、それは楽しみ

ーーーーー

「A〜！」

今日も来た乱歩さんの推理話に耳を傾ける…話し終わると、何時もならじゃーねと言う乱歩さんが

…この日は違った


「また明日ね」


「…乱歩、さん？」


「また！明日！」


嗚呼…本当に貴方は、何でも御見通しなんですね


「絶対絶対！また明日も話聞かせるからね‼」


私は…はいと答える事が出来なかった

また明日/江戸川乱歩:2→←月が綺麗ですね/芥川龍之介

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す