・ ページ37
あの日…オルフェウスの決勝トーナメントが行われた日。
リトルギガントの圧倒的強さに完敗してしまったフィディオ。
その日の夜に彼から電話が掛かってきて、思いもよらなかった告白をしてくれた。
彼の想いに応える事は出来ないけれど、一つだけ頼みがあると言われた内容が、二人きりでデートをして欲しいというものだった。
夜の間だけの短い時間だったけれど、イタリアエリアでフィディオと過ごしたのだ。
「ごっごめんね、マーク…隠してた訳じゃないの。ただ…」
「Aは俺のわがままに付き合ってくれただけなんだ。試合に負けて落ち込んでた俺を励ますために…だから、責めるなら俺を責めてくれ」
マークとフィディオは静かに見つめ合う。
何とも言えない雰囲気に少し不安になり始めた時…
「…別に誰も責めるつもりはない。Aがフィディオとデートしたのも、彼を元気付けるためだったんだろ？」
「うん…」
責めるつもりはないと言ったマークの顔は、本当にその通りなのか穏やかなものだった。
それどころか優しい目をして、私の頭にポンと手を置いてくれる。
「まあ、黙ってた事に関しては少しだけ気になったが… Aを疑う気持ちは一切ない。信じてるからな」
「！マーク…」
彼はいつだって今みたいな言葉をかけてくれる。
私を信じてるって…
今でも変わらない信頼に胸が熱くなり、フィディオの前だというのにもかかわらず、マークに抱き付いた。
「ありがとう、マーク…こんな私の事ずっと信じてくれて……」
「お前は絶対に俺を裏切るような真似はしないって、分かってるからな」
「あーあ、見せつけてくれちゃって…」
少しだけ二人の世界に入り込んで見つめ合っていると、フィディオが呆れながらため息を吐く。
私はハッとしてそこでようやくマークから体を離した。
彼はその事がちょっと良く思っていなさそうだったけど…
「俺、まだAの事諦めてないからね。ちゃんと守ってないと、すぐに俺が取っちゃうよ？」
「それはどうかな。悪いが、Aが取られるような隙は一生無いと思ってくれ」
また二人が険悪ムードに…と思ったけれど、どこか楽しそうだ。
だから、もう私が止めに入る必要もないみたい。
「今日はここで引いてあげるよ。この島で過ごせるのは今日で最後だもんな。俺はそこまで空気の読めない男じゃないからさ」
「ふ…ああ、助かるよ」
フィディオも笑みを浮かべると、私にウインクをして手を軽く上げながらこの場から去って行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：結川 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/17663132
作成日時：2021年8月23日 16時
