別れる準備をしていても (in×ar)

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ついにこの間、部屋の中のものが盗まれた。


大ちゃんと住んでいる俺のマンションの自室だ。









いつ、あの女が


どのようにしてここに入ったのかは知らない。


大ちゃんが出版社に出向いているほんの数時間と、


俺が大ちゃんの作ったお弁当を、


時間変更のために泣く泣く半分残し、


慌てて撮影場所に向かった後の


その時間の間だというのは分かる。


その日もまた、


大ちゃんと目を合わせずに食事をして、


溜息と共に自室に帰ってみると、


部屋が荒れていた。


けれど、いつものような荒れ方ではない。


以前散らかし放題だったときは、


ベッドの上に大ちゃんの写真やら、雑誌やら、


クッションや台本と、


ごちゃごちゃと散らかしていたし、


大ちゃんに触れられないストレスの為に


無意識に壊した後の部屋は、


大抵ものは床に散乱する。


それが、今日はタンスの中や、


机の中を漁るような形で零れ落ちている。


そもそも、


俺が今日の午後にこの部屋に入ったことは一度もない。









初めは、大ちゃんがついに不安の限界で


指輪を探そうとしたのかと思った。


不意に口元に笑みが浮かぶ。


だとしたら、俺のこと愛してるってことだよね…


嬉しい。









けれどそうではないと分かったのは、


大ちゃんと水族館のデートで買った


青とオレンジのマーブル模様をしたガラスの鳥が、


油性マーカーで真っ黒に塗りつぶされていたからだ。









あんなに気に入っていたこのガラスの鳥を


大ちゃんが塗りつぶすはずがない。


あのとき俺は


いつものように大ちゃんにべったりで、


ガラスの鳥にまで嫉妬したけど、


俺だってこの鳥を机に飾るほど気に入っていたのだ。









それと一緒に、


俺と大ちゃんとで撮った写真を入れたフレームが、


大ちゃんの部分だけ黒く塗りつぶされている。









指先が震えた。









何度目か分からない恐怖が身体を駆け巡り、


そしてメールの着信音が鳴る。









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