やつがれくんが記憶喪失になりました。

12,五日〜罪悪感 ページ12

〜〜〜

「春宮さん、」
あ……ひ、樋口さん……。
「あ〜えー、っと」


ｷｮﾄﾝとする彼女、そして、ｸｽｯと笑った
「このあと仕事入ってませんよね、その、私も入ってなくて___あー、つまり、何処か行きませんか？」
「ど、何処か、ですか！？良いですね…！」

今日は先輩が記憶喪失だと診断されてから五日目。
結局色々ゴタゴタはあったものの、五日たってしまえば、全て丸く収まったように普段と変わらなくなるのは流石マフィアといったところだ。

___とはいえ…先輩は未だ記憶も戻っておらず、自分の名前すら覚えていなかった。
何故か自分の異能力は覚えていたし、時代遅れな口調はそのまま。
けど、私は勿論、中原さん、樋口さん、銀さんのことまでも忘れていた。
皆がそれぞれ、先輩に気をつかわせないように無理に笑顔を見せていたら、そのうち悲しむ様子を見せる人は居なくなり、樋口さんも今こうやって、悲しげな笑顔を見せている。

「じゃあ、中華街でも行きますか…！？」
「そうですね、！支度してきます。」と、そそくさと走っていく樋口さん。


「…ハァ、」
…誰もいない廊下で、そっと溜め息をつく私。やっぱり心が痛むなぁ。
樋口さんは、私のせいで記憶喪失になったことを知らない。
それは彼女以外も例外ではなく、中原さんが私のために、と皆には「敵に撃たれて」だけ伝えてくれたらしい。
首領と中原さん、私の他は皆、私のせいだと知らないのだ。

…だからといってさ、ならいいや、とは全然ならないよなぁ…。
ならなくて正解、なったらヤバい。
だって私は____
先輩のことが本気で好きなのだから。

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