ボイコット ページ8
…そう。沖田隊長が指をさして指摘した通り、先程から私は門の影に隠れている。顔だけを覗かせて、首から下は見えないようにしている。そしてそれは意図的にやっていることだ。わざと門に隠れて、今の私の格好を沖田隊長から見えないように努力しているのだ。ずっと顔だけを出して会話をしていたのだ、不審に思わない訳がなかった。指摘されない訳がなかった。けれど、私にはそうする必要があったのだ。隠れていなければならない理由があるのだ。そう心の中で弁解しながら、私は曖昧に笑って見せた。
そうして彼は門に背中を預けていたのを起こして、腕を組んだままで私を見つめながらに口にする。
「なんでィ、俺と出掛けたくねーのかィ」
「い、いえいえ!!そんな訳ないじゃないですか!!楽しみにしてましたよすごく…!!」
「じゃあなんだって出てこねェんでィ」
と、沖田隊長は少し不機嫌そうに呟く。ごもっともだ。沖田隊長の言う通りだ。沖田隊長と出掛けるのが楽しみだったなら、こんなデートをボイコットするようなことはしてはいけないだろう。自分でも分かっている。申し訳ないと思っている。けれど、まだ心の準備が出来ていないのだ。私が今している格好を彼に見せることへ準備が。なんてったってやっぱり。
(……み、短いんだもん…!!)
…結局、昨日の夜に考えに考えて決めた着物は桃色の丈の短い着物であり、今はそれを身に纏い、白いニーハイソックスをはいている。沖田隊長の隣を歩くのなら、出来る限り可愛い服を着ていきたかった。そして、私が持っている服の中ではこれが一番可愛らしいものだったのだ。だからこれを選んだのだけれど、やはり、どうしても、恥ずかしくなってしまい、今に至る。けれど、恥ずかしいからといってこれから違う着物に着替えてくる訳にも、このままずっとここにいる訳にもいかない。
門の柱に手を添えて、少しだけ不満そうに私を見据える沖田隊長に私は小さな声で語りかける。
「…沖田隊長、」
「ん?」
「…約束をしてください」
「約束?」
沖田隊長が私の発した言葉を反芻して、それを聞いてから私はコクリと頷いた。そして、続ける。自信なんて欠片もない、しぼんだ声で。
「…私の格好を見ても、笑わないでくれますか」
「なんで笑うことがあんでィ」
「いいから…!あと、お好みでなければ着替えることを命じてくださいお願いします」
「…分かった」
沖田隊長が頷き、私はそれと同時に覚悟を決める。一度深呼吸をして、そうして、一歩、門から足を踏み出し、沖田隊長の目の前に立った。
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☁️🫧 - 見ているとき、めちゃめちゃニヤニヤしてました。沖田くん最高すぎる。喋り方難しいのにちゃんとおかしくないように書いていてすごいですすごいです!尊敬します✨ (6月14日 21時) (レス) @page15 id: bf1038f04d (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - 朝から読みふけりました(笑)やはり主様は最高です! これからも頑張ってください! (2018年5月1日 7時) (レス) id: c96dee9e6b (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - しおからさん» お忙しい中来てくれてありがとうございます!!来られなくなっちゃうんですか…寂しいですが、またしおからさんに会えるようにこれからも頑張っていこうと思います!迷惑だなんてとんでもないです!!また話しかけてくださいね^^ (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» ありがとうございます^^ 体力がなくなる…!!それは大変だ…!!読んでゆっくり休んでくださいね(笑 (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
しおから - ごめんなさい!ぜんぜん来られず…見たい気持ちもいっぱいなんですが、実は、かなりの間来れなくなりそうです…皆様のコメント欄で、私情ですいません。ピピコさん、またきっと来ます! 迷惑かもしれませんが、きっとまた来るので!更新頑張って下さい!失礼しました!! (2018年4月28日 23時) (レス) id: 1423f5ea5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月5日 18時