早いなぁ ページ43
*
「あー歩いたねィ」
「少し、休んでから帰りましょうか」
…雑貨屋さんを後にしてからも、私達はウロウロと適当に江戸を巡っていた。さっきも言った気がするけれど、沖田隊長はデート数日前から、私に何処か行きたいところを考えておけと言ってくれていた。その時は分かりましたと頷いたのはいいものの、彼とのデートのことで頭がいっぱいで。どんな服を着ていこうかという悩みだとか緊張だとか、そんなものが頭を占拠していて考える余裕がなかった。そのため、特に行く宛もなくぶらりぶらぶらとしてしまった。もっとちゃんと考えていれば何処に行くか困ることはなかったなと反省をする。けれど、まぁこんなデートもありなのではないかと、日が暮れてきた今になってはそう思えた。それは私個人の感想であり、彼はどうなのかと思うと少し不安なのだけれど。
空はいつの間にか澄んだ青色からオレンジ色に塗り替えられていた。そろとろ春に近付いて日暮れが遅くなってきたので、まだ明るいけれど、もうじき濃紺色の空へと姿を変えていくことだろう。夜はもうすぐそこまで迫っている。
そんな空の下。私達は歩き疲れて公園に足を踏み入れた。ブランコに滑り台、それから砂場しかない小さな公園だ。子供達は帰って行ったのか、もうそこには誰も居なかった。小さな足跡が砂利にはついていて、先程までは子供が居たのだということが窺える。公園に設置されているベンチに並んで腰かけて、私達はふぅ、と一息つく。
「もう夕方かぁ……早いなぁ…」
茜色の空を眺めながら、そんなことを私は呟く。いつもと同じ速度で、決して意地悪で時間の流れを誰かが早めるようなことも勿論なく、ゆっくりと進んでいるはずなのに、今日はなんだか時間が進むのが早い気がしていた。その理由にも、既に私は思い当たっているのだけれど、口にするようなことはしない。
「俺と二人で過ごせて幸せだったから?」
と、思っていたのに、どうやら沖田隊長にはお見通しだったらしい。私の顔を覗き込みながら、小さく笑みを浮かべながらそう口にする彼は、やはりエスパーなのではないかと思う。
私は熱の集まる顔をふい、と逸らしては、「…そ、ういうことにしてもいいです」なんて可愛いげのないことを返してみる。すると、沖田隊長は「そーかィ」と呟いて、ベンチに背中を預けながら呟く。彼の見つめるそちらの方向に視線を持っていくと、一番星を見つけることが出来た。
「なら、誘って正解だった」
と、彼は続けた。一番星を見つめたまま。
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☁️🫧 - 見ているとき、めちゃめちゃニヤニヤしてました。沖田くん最高すぎる。喋り方難しいのにちゃんとおかしくないように書いていてすごいですすごいです!尊敬します✨ (6月14日 21時) (レス) @page15 id: bf1038f04d (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - 朝から読みふけりました(笑)やはり主様は最高です! これからも頑張ってください! (2018年5月1日 7時) (レス) id: c96dee9e6b (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - しおからさん» お忙しい中来てくれてありがとうございます!!来られなくなっちゃうんですか…寂しいですが、またしおからさんに会えるようにこれからも頑張っていこうと思います!迷惑だなんてとんでもないです!!また話しかけてくださいね^^ (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» ありがとうございます^^ 体力がなくなる…!!それは大変だ…!!読んでゆっくり休んでくださいね(笑 (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
しおから - ごめんなさい!ぜんぜん来られず…見たい気持ちもいっぱいなんですが、実は、かなりの間来れなくなりそうです…皆様のコメント欄で、私情ですいません。ピピコさん、またきっと来ます! 迷惑かもしれませんが、きっとまた来るので!更新頑張って下さい!失礼しました!! (2018年4月28日 23時) (レス) id: 1423f5ea5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月5日 18時