自覚 沖田side ページ34
…俺の睨みに情けない悲鳴を上げながらにすたこらさっさと逃げていった男達二人が人混みに紛れて見えなくなるまで、俺は二人が去っていった方向を睨み続けた。もう二度と俺の目の前に現れるなと念じながら。ついでにAと同じ空間に現れるなと更に念じながら。そうして漸く見えなくなった頃、俺は一息つくように息を漏らして、そうしてAを横目に見据える。俺が見知らぬ野郎共二人に殺意を燃やしていることなんて知らずに言葉を紡ぎ続けているAは、今度はエビフライが何処かの土地ではエビフライではなくエビフリャーと呼ばれていると聞いたことがある、という話に移り変わっていた。
…やっぱり、端から見てAは可愛いのだと、俺は思う。いや、それは分かっていたことだけれど。
思い返してみれば、Aが真選組に入隊してからも、そういう面がチラホラ窺えることは何度もあった。隊士達は新入りとして来た女の子が可愛いと話していたし、食堂に一度Aが現れればその場がざわつくという現象も最初のうちはあったのだ。まさにアイドル状態といったところか。俺はそんな隊士達を先程のように睨みつけていた。
…まぁ、鈍感なコイツはそんなことに気付いてもいなかったけれど。それに、持ち前の真面目な一面と、そして隊士達をもしのぐ剣術の実力で、隊士達に付け入る隙を与えさせず、そんなAに言い寄る輩は現れなかった。もし仮にそんなバカが居たとしても俺が潰していただろうけれど。
そんなことを考えていれば、不意にAはこちらを向いて。
「…お……総悟さん?」
「惜しいねィ」
もう少しで『沖田隊長』癖が抜けそうだ。頑張って頂きたいものだ。Aは立ち止まり、俺もそれに合わせて足を止める。Aはじっと俺を見上げていて、俺は首を少しかしげる。
「どうした?」
「……なんだか先程から考え込んでいるように見えるのですが、気のせいですか?」
…ずっと喋っていたから、俺のことに気づいていないかと思っていたのに。なんだ、俺のことちゃんと見てんじゃねェか。そう思うと、自然と頬が綻んでいくのを感じた。
「何か、ありましたか?」
「…そうだねィ、ひとつ、言いたいことがあらァ」
「何ですか?」
俺に問い掛けるAの呆けた表情をしたその頬をむにっと摘まんで、俺は続けた。
「お前はもっと、自分が可愛いことを自覚するべきだ」
「…はぁ…?」
訳が分からない、と言いたげなその表情は間抜けていて、俺はそれがおかしくてクツクツと笑った。
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☁️🫧 - 見ているとき、めちゃめちゃニヤニヤしてました。沖田くん最高すぎる。喋り方難しいのにちゃんとおかしくないように書いていてすごいですすごいです!尊敬します✨ (6月14日 21時) (レス) @page15 id: bf1038f04d (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - 朝から読みふけりました(笑)やはり主様は最高です! これからも頑張ってください! (2018年5月1日 7時) (レス) id: c96dee9e6b (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - しおからさん» お忙しい中来てくれてありがとうございます!!来られなくなっちゃうんですか…寂しいですが、またしおからさんに会えるようにこれからも頑張っていこうと思います!迷惑だなんてとんでもないです!!また話しかけてくださいね^^ (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» ありがとうございます^^ 体力がなくなる…!!それは大変だ…!!読んでゆっくり休んでくださいね(笑 (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
しおから - ごめんなさい!ぜんぜん来られず…見たい気持ちもいっぱいなんですが、実は、かなりの間来れなくなりそうです…皆様のコメント欄で、私情ですいません。ピピコさん、またきっと来ます! 迷惑かもしれませんが、きっとまた来るので!更新頑張って下さい!失礼しました!! (2018年4月28日 23時) (レス) id: 1423f5ea5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月5日 18時