どれだけ愛しているか ページ27
…スプーンでそれを掬い上げて、それを少しの間眺める。クリーム色をしたバニラアイスに赤いいちごのソースが掛かっていて、私の目にはキラキラとしているように見える。他の人のビジョンなんて関係無い。私のビジョンでは、私の視界ではこの世に存在する何よりも輝いて見えるのだ。それはどんな財宝より、どんな宝石よりも眩い。もう何度思ったか分からない『美味しそう』という感想を内心でまた一度呟いて、漸くそれをパクリと口の中に含ませる。途端にアイスが溶けて、甘さが広がってその一歩後からいちごの甘酸っぱさがやって来る。その一連の出来事は本当に見事な流れで、きっとこのパフェはこのグラスに乗っているものの一つでも欠けてはならないのだと思う。完成されたそれからは、作った人がどれだけスイーツを愛しているかが窺える。そうじゃなきゃこれほどまでに素敵なものは作れないだろう。
頬に空いている左手を添えて、私は口にする。もうその言葉でしかすべてを語れないというように。
「すっごく美味しいですぅぅ…!」
「そりゃ良かった」
沖田隊長に目を向ければ、彼も自身の抹茶パフェを食していて、淡々と「ん、うまい」と呟いている。彼はあまりにも冷静で、ちょっとだけ恥ずかしくなって身を縮こめた。これだから子供みたいと言われてしまうのだ。気を付けようと思ったばかりなのにもう忘れていた。スイーツの威力は恐ろしいものだ。
…沖田隊長の抹茶パフェに目を向ける。鮮やかな緑色をした抹茶のアイスの上に緑色と白を交互に合わせたようなクリームが乗っている。その下にはどうやらワラビ餅が潜んでいるらしい。きな粉のほのかな茶色が窺える。日本のスイーツをこの一杯に詰め込みました!!というような一品である。これまた美味しそうだ。
「見すぎだろィ」
「……あ」
…クツクツと、私を見て彼は笑う。ついつい見すぎていた。肩を震わせて笑っている沖田隊長に、みるみる私は顔を赤くしていく。「すみません…」と弱々しく口にするも、沖田隊長はまだ笑いが止まらないらしい。あぁ、なんてことなの恥ずかしい。穴があったら入りたい。勿論パフェを完食してからだけれど。
口を結んで視線を伏せていれば、沖田隊長はまた一口分、スプーンに抹茶アイスを乗せて、そこにクリームも一緒につけた。それをそのまま自身の口に入れるのだと思いきや、スプーンを私に突き出してきた。
「ん」
「…ん?」
「食うかィ」
と。沖田隊長は何とでもないような顔でそう言って、その言葉の意味を理解するのに私には数秒の時間が必要だった。
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☁️🫧 - 見ているとき、めちゃめちゃニヤニヤしてました。沖田くん最高すぎる。喋り方難しいのにちゃんとおかしくないように書いていてすごいですすごいです!尊敬します✨ (6月14日 21時) (レス) @page15 id: bf1038f04d (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - 朝から読みふけりました(笑)やはり主様は最高です! これからも頑張ってください! (2018年5月1日 7時) (レス) id: c96dee9e6b (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - しおからさん» お忙しい中来てくれてありがとうございます!!来られなくなっちゃうんですか…寂しいですが、またしおからさんに会えるようにこれからも頑張っていこうと思います!迷惑だなんてとんでもないです!!また話しかけてくださいね^^ (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» ありがとうございます^^ 体力がなくなる…!!それは大変だ…!!読んでゆっくり休んでくださいね(笑 (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
しおから - ごめんなさい!ぜんぜん来られず…見たい気持ちもいっぱいなんですが、実は、かなりの間来れなくなりそうです…皆様のコメント欄で、私情ですいません。ピピコさん、またきっと来ます! 迷惑かもしれませんが、きっとまた来るので!更新頑張って下さい!失礼しました!! (2018年4月28日 23時) (レス) id: 1423f5ea5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月5日 18時