【銀魂】沖田隊長、初めてのデートです【沖田総悟】

ヤベェ 沖田side ページ3

沖田side


…部屋の電気を消して、適当にひいた布団に俺は寝転がる。くぁぁ…とあくびを漏らしては目元を拭う。酷く疲れているような気がした。当然だった。数日前に非番を取り付けたその日から、俺は珍しくも仕事に奮闘したのだから。今日も俺はテキパキと仕事を片付け、それなりの疲労を抱えていた。俺がサボりに走ることなく職務に向き合うのを見て、誰もが好奇の目を向けてきたけれど。仕事中の部屋を覗きに来て、写メを撮っていく輩も居たくらいだ。待ち受けにすると良いことが起こる、なんていう都市伝説のようなものが誕生するのではないかと思う。

…昨日今日と仕事に集中した理由。それは明日のホワイトデーにある。明日、3月14日ホワイトデーに、俺はAを連れ出すことにしていたのだ。バレンタインが数日過ぎたあたりからそう決めていた。だがその日は俺もAもバッチリ仕事があったため、非番を取るという選択に至った。俺は仕事をサボればいいけれど、Aもとなると話が別になってくる。Aが仕事をサボってまで俺と出掛けてくれるか。くれる訳がない。つまり、しっかりと休みを貰う必要があったのだ。

Aはホワイトデーだから、という理由で休みを取ることに。そして物騒な事件が起きて忙しい時に休みを貰うことに躊躇いを持っていたようだけれど、最後には納得してくれた。それまでに仕事を粗方片付けるということを含めたものだったけれど。しんどかった。


そんなこんなで、明日はいよいよAと出掛けることになる。世間一般に言う、デートという奴だ。


なんやかんやで、Aとデートをすることは今まで一度もなかった。二人で見回りしがてら団子屋に立ち寄ることはあっても、それはあくまで仕事だ。『恋人』としてではなく『上司』と『部下』がどうしてもつきまってくる。それはデートとは言えないだろう。


…漸く、正しく『デート』と言えるものが出来るのだ。


「……ヤベェ」


…眠れねェ、と。俺は呟いた。夜に染まった空気にその声が静かに響き、消えていく。天井を見据えては小さく溜め息をついた。おかしいだろう。疲れているはずなのに。なんてことだ。デート前日に眠れないだなんて。遠足前の子供か俺は。


なんとか眠れないものかと俺は目を瞑る。が、一向に眠気が来ない。頭の中は明日のことでいっぱいである。一度目を開き、ゴロリと意味もなく寝返りをした。暗闇に馴れた視界には、小さなタンスと本棚が見える。本棚にはとてもマニアックな本ばかりが並んでいる。

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