行きたいところ ページ17
「お前、行きてェとことかねェのかィ」
「……行きたいところですか?」
「考えとけっつったろィ」
…そう言われ、私は思い出す。そう言えば、デートに誘われた日に、沖田隊長に言われたのだ。好きなところに連れて行ってやるから考えておけ、と。酷く唐突に。が、分かりましたと答えたはいいものの、私はあまり考えていなかった。沖田隊長とのデートということで緊張して、自分の行きたいところを考えるまでの余裕がなかったのだ。デート前に仕事も片付けなければならなかったし、デート前夜は洋服選びに時間が掛かってしまったし。考える時間がなかったことも要因だろう。頭からすっかり抜け落ちていて、私は「あ」とつい声を漏らしてしまう。すると沖田隊長は眉をピクリと微かに動かして、じっとりと私を見据える。わざわざ腰を屈めて。目線を合わせるように。
「……考えてねェのか」
「……すみません」
どうしようもなく、私は謝罪の言葉を呟いた。まぁ、考えていないのだから仕方がない。私はその場で考える。会話術の本を探したいから本屋に行きたいというのは、今回の場合少し違うだろうし、行きたいところ、行きたいところ……と。内心で唱えるようにしながらに考える。別に欲しいものもないし、やりたいことも特にない。沖田隊長と一緒に居るという状況だけで、十分すぎてしまう。けれどそれではきっと彼は納得してくれないだろうから、私は思考する。
そうして、結局思い付いたのはひとつで。
「……甘いものが食べたいです」
「例えば?」
「例えば……パフェ、みたいな…?」
パフェ、と口に出すことはあまりないから、ぎこちない響きになってしまった。行きたいところ、と問い掛けられて、思い付いたのは甘味処だった。甘いものは好きだし、いつだって食べたいなぁと思う。お団子はたまに食べるけれど、パフェなんて贅沢なものは、最近食べていない。それに、片手で数えられるくらいしか口にしたことがない。物欲が乏しい私でも、純粋に食べたいなと思える。
「…連れて行ってくれますか?」
「当然だろ、お前の行きてェとこに行くって決めてんだからよ」
んじゃ行くか、と。
そう言いながら沖田隊長は、自身の左手で私の右手を繋いだ。指と指を絡めるようにして。とても自然な動きで。唐突に触れたそれに、肩がピクリと跳ねて、思わずその手を凝視してしまう。
…所謂、恋人繋ぎというやつだ。
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☁️🫧 - 見ているとき、めちゃめちゃニヤニヤしてました。沖田くん最高すぎる。喋り方難しいのにちゃんとおかしくないように書いていてすごいですすごいです!尊敬します✨ (6月14日 21時) (レス) @page15 id: bf1038f04d (このIDを非表示/違反報告)
白桃餅子 - 朝から読みふけりました(笑)やはり主様は最高です! これからも頑張ってください! (2018年5月1日 7時) (レス) id: c96dee9e6b (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - しおからさん» お忙しい中来てくれてありがとうございます!!来られなくなっちゃうんですか…寂しいですが、またしおからさんに会えるようにこれからも頑張っていこうと思います!迷惑だなんてとんでもないです!!また話しかけてくださいね^^ (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 白桃餅子さん» ありがとうございます^^ 体力がなくなる…!!それは大変だ…!!読んでゆっくり休んでくださいね(笑 (2018年4月30日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
しおから - ごめんなさい!ぜんぜん来られず…見たい気持ちもいっぱいなんですが、実は、かなりの間来れなくなりそうです…皆様のコメント欄で、私情ですいません。ピピコさん、またきっと来ます! 迷惑かもしれませんが、きっとまた来るので!更新頑張って下さい!失礼しました!! (2018年4月28日 23時) (レス) id: 1423f5ea5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2018年4月5日 18時