美彩は知っている

本当に…。 ページ30

翼「アーヤ、今日ランチしよ。」

彩「あー……ごめん。先約があるの。」






私が断ると翼は、深く傷ついたような顔をした。



……その顔、やめて。






私、期待しちゃう面倒くさい女だから…さ。





彼女にも迷惑でしょ？









翼「先約って、男？」

彩「違うよ、マリンだよ。」



翼「…なら、良いんだ。」







なぜか翼は安心したように笑って、デスクに戻っていった。






数秒後、私は思い出す。








あれ、私の小説のシーンのパクりだ！








翼は、悪戯っ子だから私をからかっていたんだ。









なぁんだ。









そう分かってから、なんでだろ…ホッとしている自分がいる。









あれ、こういう時って傷つくんじゃないのかな。









………私、本当に翼が好きなんだろうか。









確かに、翼が彼女の話をすると苦しくなるけど。








それは“初恋”だから…思い入れが強いせいなのかもしれない。







『私は翼が好きなんだ』っていう思い込みかも。








……だとしたら、私…単純すぎる。









少し熱くなった頬をペチン、と叩き、マリンとのランチへ向かった。

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