朔望月

☾ ページ2

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部屋の電気をつけないとこんなにも差し込む月明かりが明るいと感じるなんて、

不意に、まるで太陽を連想させるかの様な名前の恋人の顔が浮かんだ



…大丈夫、さっきのはただの夢だ

最近ゆっくり会えてなかったから

もう何日も彼奴と直接触れ合ってないから

少しばかり不安になっただけだろう

それだけ


"北山って結構子供みたいな可愛いところあるよね"


以前多忙が故のタイミングのすれ違いばかりが続いた時、正直に寂しいなんて珍しく零したら

驚いたあと少しはにかんで優しく笑っていた顔を思い出す

どうせ見るなら

夢の中で会えるなら

そんな、幸せな内容であれば良かったのになんて

夢を見る原理など分からないのに心の中で誰に向ける訳でもなく悪態をついてみた

静かに窓辺に近付き、寄りかかって今一度満月を見上げる




「…藤ヶ谷、お前もこの月見てたりするのかな…」




深夜2時過ぎ

寝てる可能性も高い中もし、恋人もこの夜空を見上げて同じ満月を眺めていたりしたら…

それだけで今は気持ちも少し強く持てる気がした

日付も変わった今日はグループ全員の仕事で彼奴にも久しぶりに会える

仕事場に決して私情は持ち込まない

でも、一言挨拶を交わすだけでも

顔を見れると思うだけで胸の奥が小さく音を立てた気がした

…一旦、夢のことは忘れよう

考えてしまえばどんどん悪い方向に思考が引っ張られがちなのは俺の悪い癖だ

大丈夫

何も心配なんかいらない筈

…大丈夫

一目、藤ヶ谷の顔を見れれば安心出来る自信はあるから




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