☾ ページ29
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その仕草が、見つめてくる目が
あの胸がキリッと痛む冷たさじゃない
ただ、自分へと向けられる愛情と優しい色のみを纏う様へと変わっていた
離れなくていい、一緒に居ていいと
実感させてくれる
「…太輔、」
「…っっ」
「太輔、…っ」
面と向かってはほぼ初めてに近い直接紡ぐその愛しい名前
あんな恥ずかしかったものも一度口にしてしまえば、こんなにも簡単に零れてくるのだと知った
今度は少し強引に塞がれた唇はあっという間に藤ヶ谷の思うがままにされる
触れられるのが、余裕無く求めてくれるのが嬉しくて首の後ろへと腕を回した
…と、甘い空気から一気に現実へと引き戻すトークアプリの通知音が鳴る
「……、」
「……っ」
一瞬止まり、お互いすぐ反射的に唇は離すも、まだ触れ合えるギリギリの距離からは何故か動けずにいた
「……太輔、確認しないと」
「…うん、でも、」
「仕事のことかもしれないだろ」
「……」
まだ続けようとするのを手で制すれば僅かに眉間に皺をよせる
まるで子供みたいなそんな反応が可愛く感じてしまい思わず口元が緩みかけた
そして自らのスマホを見た途端すっと、表情が和らぐ
「渉からだ。 ………あ、」
聞こえた名前に皺が消えた理由にも納得してたら今度は明らかに「ヤバい」と貼り付けた顔で徐にスマホの画面を突き付けてきた
そこに並んでいたのは
"仲良く出来てるのは良いけど、もうすぐ看護師さん戻る時間でしょ?"
「……っっ!!」
横尾さんからのメッセージの意味を飲み込むとほぼ同時ガタガタ音を立てながら慌てて藤ヶ谷から離れた
ベッドの隣に置かれていたパイプ椅子に何とか座り、泣き腫らした目をゴシゴシ擦って涙の跡を誤魔化す
「宏光、そんなに擦ったら腫れちゃうよ」
「…様子見に来ただけで泣いてたなんて、人に見られたらみっともねぇだろ」
マスクをして朝は付けてた伊達メガネをすれば何とか目元は隠せそうだ
慌てる自分を見て小さくクスッと笑いを零した太輔に内心文句を向けたくなるも、久しぶりにこんな優しくて柔らかい空気が二人の間に流れてる事実が胸を高揚させる
「…太輔、この後は?」
「うん、あと一つだけ収録あるからそれ行って今日は終わり」
「え、そんな状態でまだ仕事…っ?!」
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kurumi(プロフ) - aaaさん» 切なくなったりドキドキしたり…そんなお話が書けたらと思っていたので楽しんで頂けていたら何よりです(*´˘`*)私もFさんは月のイメージでした。でも此のKiさんにとっては太陽なんですよね。逆にFさんにとっては…。ありがとうございます!最後までよろしくお願いします (2022年10月5日 22時) (レス) id: 65b4911c20 (このIDを非表示/違反報告)
aaa(プロフ) - このお話、いったいどう着地するんだろうとドキドキしながら読ませて頂いてたのでちょっとホッとしてます。Fくんって太陽の太が入ってるのに月のイメージなんですよね。。月の満ち欠けで進むお話素敵ですね。続きが楽しみです。 (2022年10月5日 19時) (レス) @page27 id: 28fb511570 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kurumi | 作成日時:2022年8月4日 0時