検索窓
今日:7 hit、昨日:11 hit、合計:86,323 hit

ページ27

*




「…横尾さん、俺……っ」

「いいから。早く行ってあげて。 …素直になれない彼奴は心の中では誰よりも一番ミツに会いたがってるんだから」

「……っ!」




二階堂や千賀と同様

そっと背中を押してくれる

やるべき事、向かうべき事を示してくれる




「…ありがとう、」

「廊下は走らないでねー(笑)」




八重歯を覗かせた笑顔に小さく頷いて歩き出した

もう、迷ったりなんてしない






「…………、」




あんなに勢い良かったもののいざ、病室の前に来ると急に怖気付いてしまう

皆は大丈夫と言ってくれたけれど、もしまたあの冷たい目を向けられたら…




「……っっ」




でも、自分の気持ちもちゃんと伝えて、藤ヶ谷の想いもしっかり受け止めたい

意を決してノックする…も、少し待っても中からは何の反応も無い

扉に手を掛け静かに開ければ、ベッドの上に仰向けで横たわり、腕に点滴の管が繋がってる状態で寝ている藤ヶ谷の姿が目に入ってきた

後ろ手に扉を閉めて起こさない様、そっと近付く

穏やかな表情

きっと、相変わらず家ではまともに寝れてもいないのだろう

少しでも此処で休めているのなら良かったと安堵する




「……太輔、」




一緒に居る時にも恥ずかしくてなかなか呼べなかった愛しい響き
小さく零して申し訳なさ程度に手を握る

…と、瞼が震えゆっくりと切れ長の目が開いた

一瞬、視点が定まらず宙を舞った後、こちらを向いて自分の姿を認識すると同時、驚きで見開かれた瞳と視線が絡む




「……きた、やま……っ、?」

「ごめん、起こしちゃったか?」




ぐっ、と腕ごと引っ込めようとしたのを握っていた手に力を入れ引き止める

困惑も混じったその顔が、一刻も早く距離を取らなければと考えてるのだと分かったから

俺の隣から居なくなるなんて離れるなんて、そんなのもう絶対に許す訳ない




「…全部、話聞いた」

「……っっ」

「…すぐ、そうやって一人で背負おうとするな、追い込むな。 …もっと、頼って甘えていいんだよ。負担でも迷惑でもない。何より俺が、藤ヶ谷の一番傍に居たいんだから。 …お前を支えることぐらい許せ…」

「………きたやま…」




名前の後、何か言い掛けるその言葉も遮る様に腕を引いて身体を抱きしめる

トクトクと、洋服越しでも伝わってくる心臓の音にぁぁ、久しぶりに触れられているんだなと実感して溢れそうになる涙を唇を噛んで堪えた




_

☾→←☾



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (214 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
480人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

kurumi(プロフ) - aaaさん» 切なくなったりドキドキしたり…そんなお話が書けたらと思っていたので楽しんで頂けていたら何よりです(*´˘`*)私もFさんは月のイメージでした。でも此のKiさんにとっては太陽なんですよね。逆にFさんにとっては…。ありがとうございます!最後までよろしくお願いします (2022年10月5日 22時) (レス) id: 65b4911c20 (このIDを非表示/違反報告)
aaa(プロフ) - このお話、いったいどう着地するんだろうとドキドキしながら読ませて頂いてたのでちょっとホッとしてます。Fくんって太陽の太が入ってるのに月のイメージなんですよね。。月の満ち欠けで進むお話素敵ですね。続きが楽しみです。 (2022年10月5日 19時) (レス) @page27 id: 28fb511570 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:kurumi | 作成日時:2022年8月4日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。