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2-Dと書かれた教室の扉を開ける。
「………三輪はまだ来てないのか…」
目的の人物を見つけられなかった。このところいつもそうだ。三輪は私より後に教室に入る。
とりあえず他に用事のある人物はいないため、席に着く。学校では極力目立たないように過ごs…
「よぉ!シロ!朝っぱらから辛気臭ぇ顔してんな!」
「………ヒカリ、私を犬みたいな名前で呼ぶのはいい加減やめてくれ…」
「いいじゃん!白鷺って言いにくいしさ!」
目立たないように過ごすのは不可能だった。何せこの女…仁礼光が朝一番で私にダル絡みするからである。嫌ではないけど、犬みたいな名前で呼ぶのはそろそろ何とかして欲しいものだ。
「仁礼、そこは俺の席だ。」
ようやく三輪が来た。三輪の席は私の隣。だから自分の席で待っていれば、用事は済ませられる。
「三輪、渡すものがある。」
私は鞄の中から茶封筒を取り出し、三輪に渡した。
「確かに受け取った。」
「お?なんだ?恋文?」
私はヒカリにデコピンしながら毒づいた。
「城戸司令が三輪に恋文なんか書くと思った?」
「なんだぁ、ただの指令書かぁ…おもんねぇなぁ…」
ヒカリは悪態をついてどこかへ行ってしまった。彼女なりの気遣いだろう。
「指令書の内容は把握した。昼休みに詳しく聞いていいか?」
「うん。そう言うだろうと思ってた。」
私はS級隊員だが、防衛任務はあまり参加していない。その代わり、城戸司令の補佐的な仕事を任されている。とはいえ、主な仕事は資料まとめや、指令書届けなど、いわゆる雑用なんだけど…
昼休み
「で、内容についてなんだけど…」
三輪と密会する時は空き教室と決まっている。
色んな都合で三輪と一緒にいたり、三輪と登下校を共にすることがかなりの頻度であるが、誰も三輪と私が付き合っているという噂を流さない。
「なるほど、では明日から俺たちは防衛任務のシフトを外れてそちらの任務に就く…と?」
「そうなる。三輪隊のシフトを私が埋める形で動くことになる。」
「了解した。」
向かい合って食事しながら淡々と仕事の話…ムードもクソもない。正直三輪にそういうのは期待してないし、あちらにもその気は無いだろう。
でも三輪といるのは心地いい。余計なことを言わないし、しないし、何より察しがいい。
「………三輪」
「どうした?」
「……いや、何でもない。任務遂行には細心の注意を…との事だ。」
「嗚呼。」
今日も言えなかった。
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作者名:まるちぇろ | 作成日時:2021年2月10日 0時