片想い ５６ ページ6
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レッスンを終え、メンバーとAと共に校門まで向かっていると、そこに人影が見えた。
ここの制服ではないが、見覚えのある顔だった。
そいつの顔を見ると、Aは顔を顰め、早足でその場を通り抜けようとした。
けれど、Aの細い腕を、そいつは安易に掴んだ。
「……何でいるの、知輝」
「頼む、顔を上げてくれ。前の事も含めて、お前と話をしたいんだ」
眉を下げる自分の幼なじみを、Aは見ようともせず、下を向いていた。
「前の事？」と頭を傾げるスバルと真を、Aたちのやり取りを見て何かしらを悟った北斗が「黙ってろ」と人差し指を口元に当てる。
そんな中、前の事を知っている俺は、少しハラハラしながら二人を見ていた。
「話す事なんて何もない。私はもう、今後知輝たちと関わるつもりなんてない」
「そんな事言うな。梓沙だって、あの時はついカッとなって」
「どうせ、知輝は梓沙の変わりに謝りに来たんでしょ？何その変な優しさ。バカみたい」
気の知れた幼なじみを前に、ヒートアップしていくA。
(お願いだ。Aをこれ以上、苦しませないでくれ……)
そう願っても、現実はそう簡単に思い通りにいくわけがない。
「もうベースも売った。軽音楽部も辞めた。私の部屋に貼ってあった大好きなバンドのポスターも、全部全部剥がしたっ！！」
そう言いながら、Aは鞄から取り出したものを、知輝の胸に叩きつけるかのように、強く押し付けた。
それは、Aが大事にしていたあのファイルと、作詞に使っていた紙だった。
「今度のライブの歌詞だけ作った。あとは、自分たちで勝手にどうぞ。良かったね。今回キーボード使わないし、梓沙何でも弾けるから私の変わりはいるし、知輝は弾き語り出来るから、ボーカルしながらギター弾けばいい」
「待てよAっ！！」
強く握ろうとした手を振り払い、Aは振り払い、涙を溜めた目で知輝を強く睨みつけた。
その時のAは、とても苦しそうで、とても辛そうだった。
「もう関わらないでっ！！変な優しさで傷つけるくらいなら、私の前に現れないでっ！！
__________あんたらなんて、大っ嫌い！！」
そう言い残して、Aは走り去ってしまった。
……あぁ、ダメだ。
(このまま放っておくと、Aは本当に壊れてしまう)
「い、衣更くん！？どこ行くの！？」
気付けば俺は、Aを追って走っていた。
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作者名：水神友花 | 作成日時：2018年10月17日 22時
