誘拐:38 ページ45
瀬「どうやって脱出?してきたかはわかんないけど、仲間とかに来られたら困るでしょ。とっととこんな所出た方がいい。
ここ、案外花宮ん家と近いしさ。」
「…………あぁ、…そうだな」
瀬「……?」
言い淀む俺に、瀬戸が首を傾げる。
瀬「何、何か気になることでもあった?」
「いや、気になるっていうか、」
なんというか。
瀬戸が困惑するのも無理はない。何しろ俺自身が、何が気になっているのか分かっていないのだから。
いや、正直部屋に残したままにしてきてしまった謎は幾つかある……幾つもあるのだ。
例えば、Aの正体とか。
例えば、Aの目的とか。
例えば、隠し手紙のおっさんのこととか。
例えば、例えば……考え出すとキリがないほどである。
でもそれも、脱出してしまえば何も関係はない。
いくらAの腕がたつと言えど、いくらAが頭がきれる女であると言えど、もう2度と誘拐されるなんて失態はないはずだ。
そもそも、誘拐なんてリスクが高過ぎるのだ。まして、警戒している相手を連れ去るなど、女一人の手で2度も成功できるものではない。Aがそんなリスクに手を出すような馬鹿ではないことはわかっている。
そして、標的が逃げたとなれば当然、通報を恐れるはずだ。目を覚ましたAが出来ることと言えばただ一つ、捕まらない所まで逃げるのみである。
よって、俺はあの女とは2度と会うことはない。
だから俺は、すっきり、綺麗さっぱり忘れてしまえばいいのだ。
この数日間のことなんて、何も無かったかのように。
そう。
この事件は、俺の脱出により終幕。
事件があったことすら闇に葬られ、後には何も残らなかった。
それでいい。
「……おい、肩貸せ。飛び降りたとき足くじいて歩けねぇ」
原「えー?花宮がそんなこと言うなんて珍しいねん。
いつもならどんだけ痛くても自分で歩くって言うのにさ」
「うるせぇよ。怪我してんのは足だけじゃねぇんだからしょうがねぇだろ。
いいからとっとと起こせよ、」
古橋に飛びかかられてから座り込んだままだった俺は、一番近くにいた原に手を伸ばした。
同時に、何気なく原を見上げて、その遥か彼方後ろにあるソレが目に入って。
すなわち、曇天に覆われた空のほんの小さな雲の割れ目から「満月」が覗いたのを見た瞬間。
「……見つけた」
全ての謎を解く鍵は。
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Mae(プロフ) - かぼちゃポンタさん» コメントありがとうございます!!メインの2人以外にも結構時間を割いているので、そんな風に黒子の活躍(?)を見ていただけて嬉しいです笑。レス遅くなってすみませんでした! (2016年8月30日 16時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
かぼちゃポンタ(プロフ) - 黒子の締めで笑いました、はい!2見てきます!! (2016年7月26日 14時) (レス) id: b325383cfb (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - スピカ@しののんとmarvelousへの旅さん» 伏線ともいえない伏線もどきは一応張っていたのですが、やっぱりわかりにくかったですよね……すいません!黒子のほかにも謎はたくさん残してあるので、また推理しながら楽しんでいただけたなら幸いです。コメントありがとうございます!! (2016年3月30日 20時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
スピカ@しののんとmarvelousへの旅(プロフ) - まさかの、手伝いが、黒子だったとは、、、 驚きのあまり、十秒間口にポカーンてなってました笑 今まで分からなかったところがわかって、すっきりはしたけど、続きを読むのが楽しみです。 本当黒子とか思いませんでした (2016年3月30日 18時) (レス) id: 5f4212bb8d (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - 狐サマさん» 長いこと引っ張ってきた伏線がやっと表に出たので、私自身もホッとしてます笑。花宮はいい意味で期待を裏切ってくれる存在だと思ってるので、読者様に対してもそう在れたのなら幸いです。コメントありがとうございます! (2016年1月28日 22時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2015年5月12日 22時