誘拐:30 ページ37
低く唸るようにそう言うが早いか、Aは俺に向かっての突撃を始めた。
それはもう特攻とでも言えるような文字通り体を使った体当たりであり、戦闘序盤にしては無謀にも思える攻撃であるが、人間、存外この戦法には弱いものなのだ。
普通戦闘と聞いたら殴る、蹴るなどの攻撃を想像するだろう。いや、無意識にしてしまうはずだ。その思い込みが命取りになる。
拳や足を使った攻撃なら一点さえ避けてしまえば躱すのは容易いが、なにしろ予期せず自分と同じサイズの物体(この際体格がどうのとかは別にして)が突然迫り来るのだから、一瞬の判断に遅れる。
迷うのだ。
その迷いは、戦闘においてことに大きな隙になってしまう。
「……ッ!」
間一髪避けたとしても、間を一気に縮めて勢いの残る相手の次の攻撃に対処できない
――――――――――はずであった。
勢いそのままに振り上げられたアイスピックを握るAの右手を咄嗟に掴んだ。
ほんの一瞬固まるAの手をはたいてアイスピックを取り落とさせる。
部屋の端までそれを蹴飛ばすと、Aは即座に俺から距離をとった。
『……ふぅん。今ので決める予定だったんだけど。
案外、動けるじゃない。』
「バァカ。あれくらい出来ねぇでウチの馬鹿どもと付き合えるかよ。」
まぁ別にアイツらのせいで喧嘩慣れしたわけではないんだけどな。
喧嘩は小さい頃から強かった。
動体視力が高かったのもあるが、相手の動きを読むアタマとそれに対応できる身体能力も持っていた。
まぁ、ある時からは優等生ぶって猫かぶっていたから、よく喧嘩をするというわけでは無かったけど。
別に喧嘩が嫌いなわけではないのだ。
だから、経験と予測―――――――この二つによってAの特攻を切り抜けただけだ。
そうは言うものの、今まで見たどんな奴より疾い動きではあったし、予想外と言えば予想外で、自分でもよく避けられたものだと褒めたいくらいだ。
まぁともかくこれでアイスピックという一つの驚異は去ったわけであり、幸先としてはいいと言えなくもないだろう。
Aがどれ程の武器を隠し持っているかはわからないから判断もしようがないが
他にAが持ちうる武器と言えば、そう、つい最近見た―――――――――――
「針金…………とかな、」
俺がそう口に出したのと、Aが懐からそれを出し振るったのは、ほぼ同時だった。
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Mae(プロフ) - かぼちゃポンタさん» コメントありがとうございます!!メインの2人以外にも結構時間を割いているので、そんな風に黒子の活躍(?)を見ていただけて嬉しいです笑。レス遅くなってすみませんでした! (2016年8月30日 16時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
かぼちゃポンタ(プロフ) - 黒子の締めで笑いました、はい!2見てきます!! (2016年7月26日 14時) (レス) id: b325383cfb (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - スピカ@しののんとmarvelousへの旅さん» 伏線ともいえない伏線もどきは一応張っていたのですが、やっぱりわかりにくかったですよね……すいません!黒子のほかにも謎はたくさん残してあるので、また推理しながら楽しんでいただけたなら幸いです。コメントありがとうございます!! (2016年3月30日 20時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
スピカ@しののんとmarvelousへの旅(プロフ) - まさかの、手伝いが、黒子だったとは、、、 驚きのあまり、十秒間口にポカーンてなってました笑 今まで分からなかったところがわかって、すっきりはしたけど、続きを読むのが楽しみです。 本当黒子とか思いませんでした (2016年3月30日 18時) (レス) id: 5f4212bb8d (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - 狐サマさん» 長いこと引っ張ってきた伏線がやっと表に出たので、私自身もホッとしてます笑。花宮はいい意味で期待を裏切ってくれる存在だと思ってるので、読者様に対してもそう在れたのなら幸いです。コメントありがとうございます! (2016年1月28日 22時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2015年5月12日 22時