【花宮真が誘拐されました。】

誘拐：24 ページ29

東側にあった太陽もようやく反対側に傾き始めた。

Aが作った味と見た目は申し分ない賄い飯みたいな昼飯を食い終わり、俺は新しい本を探すため立ち上がった。

何しろ此処には大量に本がある。一年かかっても読み切れないほど、たくさん。

Aに殺害予告されているとはいうものの、A自体まだ殺す気はないと言っているのだ。だったらこちらも焦る必要はない。


だからこうして暇つぶしの読書に徹しているわけだが、焦る気持ちがゼロだとは言いきれない。部屋を調べて手紙を見つけたりはしたが、脱出に繋がる直接的なヒントを得ることが出来ていない。
そんなものが本当にあるのか、と疑問さえ湧いてくる。


……が、俺は確信を持って断言しよう。







脱出に繋がるヒントは、ある。









Aは、まだ殺す気はないと言った。
裏を返せば、いつか犯行に及ぶきっかけがあるということ。Aの態度から見て、Aはそれを待っているのだと思う。




Aは、俺の何かしらのアクションを待っている。

それは俺が脱出しようとすることではないかと思うのだ。




おそらくこの推察は間違っていない。

だから、脱出のヒントがAの仕掛けた罠であったとしても、例を出せばあの手紙がAの自作自演だったとしても。

俺はこの部屋を脱出しなければいけない……否、しようとしなければいけない。



その為にももっとこの部屋を調べなければいけないと思っているのだが、……まぁこうもAに居座られていれば堂々と出来るものではない。


今その張本人は日が当たる場所に寝転がって漫画を読んで１人で笑っている訳だが。
ちなみに人がゴロゴロ死ぬ系のホラーパニック漫画である。
どこに笑いどころがあるのかはまったくわからない。






俺の当座の目標はAに勘づかれずにヒントを見つけ出し、悶着なしで脱出すること。
失敗すればAのアサシンばりの攻撃が待っているわけだから、ハードルは高いと言えるだろう。

だから早くこの女出て行かねぇかな、あわよくばそのまま戻って来なければ、とも思いつつ、読み終わった本の山を棚に戻す。

と、そこであることに気付く。

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