【花宮真が誘拐されました。】

誘拐：23 ページ28

「……つうかAお前、ホントに俺を殺す気あんのかよ。」


『あら……なぁに、疑ってるの？』



ぴょん、とAが俺の上から飛び降りた。




「むしろ疑わねぇ方が変だろ。
どこに標的の上に乗って頬引っ張ってる殺人犯がいんだよ」


どうにも本気で殺そうとしてるようにみえねぇんだよな。遊び半分っていうか。

嫌がらせの内容も、言ってみればイタズラみないたもんだし。精神的にくるってほどのモンでもない。……ストレスはたまるけど。





『殺ってほしいっていうならいつでも殺れるけど』ｼｭｯ












何か飛んできた









それはストッと軽快な音を立ててソファに突き刺さった。うまい具合に頬を掠めて。俺の頬に恨みでもあんのか。

右頬の真横に１つ、髪をソファに留めているものが１つ、脇腹の辺りに１つ。

針金？……もっと短い、裁縫針みたいな。







「……また物騒なモン出してきやがって」



どこに隠し持っていやがった……お前は忍者か。

最近Aに関するたとえ、多いわー。



『そんなに物騒なものでもないわ。あたしが持つから物騒になるだけよ』


「自慢げに言うことじゃねぇだろ」


『ダーツが得意なの』


「奇遇だな、俺もだよ」


『一緒にしないで。私のは人体を的にした場合だけよ』


「物騒すぎんだろ」



思考回路がな。
物騒つうか、アブねぇコイツ。









『だから、言ったでしょ。
今殺しても面白くない、意味なんてないの。
じっくり遊んでから殺る、って。

いつでも殺れるんだから焦ることなんてないでしょう？』



Aが頬のかすり傷から溢れ出た血を指で掬って舐めとる。








｢あぁやっぱコイツ狂ってる｣、そんな考えが頭をよぎる。


こんなに愉しそうに殺人予告する人間なんていねぇよ。

何がお前をそうさせてるんだろうな。

俺なのか。
俺がいつかにやったことが、お前をここまで駆り立ててんのか。

全然、わかんねぇよ。


こっちも、償う気はないけど。


















『それはそうと、』



Aが針金？をその辺に捨てながら口を開く。

やめろよ危ないだろ、適当に捨てんじゃねぇ。
武器なんじゃないのかよ。




『さっきはだいぶ驚かなかったわね。

この状況に慣れてきてるんじゃないの』


｢自分で自分が怖い｣





俺あの言葉超嫌いだから絶対使いたくないけど初めて使いたくなったわ。

「それな。」ってやつ。

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