誘拐：35 ページ42
Aの身体から力が抜け、その重みがずしりと掛かってきた。
目は見開かれているが、何も考えられないといった表情であり、ただただ口付けを受け止めている。
俺はAが離れないよう、Aの後頭部をに添える手に力を入れて。
口の中に含んでおいた薬を噛み、Aの唇の間からそれを押し込んだ。
『！？』
カリ、と響いた音に反応し、Aの瞳に理性が戻る。
慌てて離れようとするが、もう遅い。
俺は更に右手に力を込め、離さない。
慌てようともするものだ、何せそれはAがこれまで何度も使ってきたモノなのだから。
厳密に言うと少し違うかも知れない。
俺が今使ったのはAが俺の夕食に何度か混ぜたアレではなく、見知らぬおっさん(？)から本を伝って譲り受けた睡眠薬だ。
薬が完全に溶けきり、Aのまぶたが眠気に下り始めたところで、唇を離した。
Aはほとんど朦朧としながらも、ぎり、と歯軋りの音と共に俺を睨みつける。
『く、……っそ、何であんたが……っ』
「たまたまだよ、偶然見つけてなぁ。
よく効くだろ？それ……
即効性、らしいからよ」
言い終えるかどうかのうちに、Aは完全に崩れ落ちた。
俺は再び全体重を預けてもたれ掛かるAを退かすと、まず最初に左腕に刺さったままのアイスピックを抜こうと試みる。
「っ痛ぅ……ッ、イッテ…っぁあこのクソ女が!!」
悪態をつきながらやっとの思いで引き抜くと、ずぶりと鈍い音がして血が飛び散る。
もはや左手の感覚は無く、血は留まることなく溢れ続けている。
止血は……やり方はよくは知らないが適当に傷口の上あたりをタオルでキツく縛った。
効果あんのか？これ。全然痛みも収まってる気がしないんですけど。
Aのポケットから抜いた鍵を差し込むと、足枷は呆気なく音を立てて外れた。
最後に数日間を共にしたよしみでAを硬い床の上からソファに運んでやると、俺は窓枠に足を掛ける。
一言、
「じゃあな、A。」
アイスピックの一撃だけは予想外だったぜ。
とだけ、背中越しに呟いて、
俺は地面に向かって飛び降りた。
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Mae(プロフ) - かぼちゃポンタさん» コメントありがとうございます!!メインの２人以外にも結構時間を割いているので、そんな風に黒子の活躍(？)を見ていただけて嬉しいです笑。レス遅くなってすみませんでした！ (2016年8月30日 16時) (
レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
かぼちゃポンタ(プロフ) - 黒子の締めで笑いました、はい！2見てきます！！ (2016年7月26日 14時) (レス) id: b325383cfb (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - スピカ@しののんとmarvelousへの旅さん» 伏線ともいえない伏線もどきは一応張っていたのですが、やっぱりわかりにくかったですよね……すいません！黒子のほかにも謎はたくさん残してあるので、また推理しながら楽しんでいただけたなら幸いです。コメントありがとうございます！！ (2016年3月30日 20時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
スピカ@しののんとmarvelousへの旅(プロフ) - まさかの、手伝いが、黒子だったとは、、、 驚きのあまり、十秒間口にポカーンてなってました笑 今まで分からなかったところがわかって、すっきりはしたけど、続きを読むのが楽しみです。 本当黒子とか思いませんでした (2016年3月30日 18時) (レス) id: 5f4212bb8d (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - 狐サマさん» 長いこと引っ張ってきた伏線がやっと表に出たので、私自身もホッとしてます笑。花宮はいい意味で期待を裏切ってくれる存在だと思ってるので、読者様に対してもそう在れたのなら幸いです。コメントありがとうございます！ (2016年1月28日 22時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mae | 作成日時：2015年5月12日 22時
