誘拐:21 ページ25
Aに部屋の隅に置いてあった申し訳程度の毛布を掛け、洗面所にあったタオルを水で冷やして額に置き、汗を拭いてやる。
こんな時でも明確に働く俺の脳ミソは随分優秀なようだ。
それも、行動が伴っていればの話だが。
「っ……、クソっ……!」
体が重い。目が回る。足がもつれて上手く歩けねぇ。
手際よくやればすぐ終わるようなこんな作業でも、10分はゆうに経過している。
(ふはっ、天下の"悪童"が聞いて呆れるぜ。)
(自分を閉じ込めて嫌がらせした張本人を、息切らして必死で看病しているだなんて。)
(寧ろ今が絶好のチャンスなんじゃねぇのか?)
(こんなろくでもねぇ女、ほっといて脱け出しちゃえよ。)
頭の中で俺の声が響く。
言うまでもなくそんなことはわかっていた。……それでも。
それでも、俺がAから流れ落ちる雫を拭く手を止めないのは。
俺は、
本当は、
こいつが――――「うるせぇっ!んなことどうだっていいんだよ!」
部屋の暗がりに、誰にともなく叫んだ。
既に意識の無いAにもそれは響いたらしく、Aも「う……」と声を漏らす。
勢いよく立ち上がってAを見下ろす。
手足についた枷が金属音を鳴らすが気にもならない。
「今なら枷付いてたって勝てるぜ。
少し力入れりゃあ、俺がお前を殺すことだってできる」
Aの細っせぇ首に片手を回す。
熱を持って、触っただけで折れてしまいそうな首だ。
「今俺はお前より上の立場だ。
だから、俺がお前をどうしようと俺の勝手だろ?
俺がお前の看病をしようと、俺の勝手だろ?
答えろよ。……なぁ、A。」
細い首に徐々に力を加えていく。
……返事は、返ってこない。
力が入りきらないから、体重をかけていく。
……返事の代わりに、Aがケホリと咳をした。
もう片方の手を添えようとした。
……Aはその手を掴んで、言った。
『ま、って…………か、なぃ……で。
……行かないで。』
頬に透明な線が一筋、できた。
「ったく……お前は死ねっつったり行くなっつったり、何がしてぇんだよ。
……ほんとに馬鹿だ。このバァカ。」
1人ではあまりあるサイズのソファに、Aの隣に横なる。
重さに任せて瞼を下ろした。
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Mae(プロフ) - かぼちゃポンタさん» コメントありがとうございます!!メインの2人以外にも結構時間を割いているので、そんな風に黒子の活躍(?)を見ていただけて嬉しいです笑。レス遅くなってすみませんでした! (2016年8月30日 16時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
かぼちゃポンタ(プロフ) - 黒子の締めで笑いました、はい!2見てきます!! (2016年7月26日 14時) (レス) id: b325383cfb (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - スピカ@しののんとmarvelousへの旅さん» 伏線ともいえない伏線もどきは一応張っていたのですが、やっぱりわかりにくかったですよね……すいません!黒子のほかにも謎はたくさん残してあるので、また推理しながら楽しんでいただけたなら幸いです。コメントありがとうございます!! (2016年3月30日 20時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
スピカ@しののんとmarvelousへの旅(プロフ) - まさかの、手伝いが、黒子だったとは、、、 驚きのあまり、十秒間口にポカーンてなってました笑 今まで分からなかったところがわかって、すっきりはしたけど、続きを読むのが楽しみです。 本当黒子とか思いませんでした (2016年3月30日 18時) (レス) id: 5f4212bb8d (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - 狐サマさん» 長いこと引っ張ってきた伏線がやっと表に出たので、私自身もホッとしてます笑。花宮はいい意味で期待を裏切ってくれる存在だと思ってるので、読者様に対してもそう在れたのなら幸いです。コメントありがとうございます! (2016年1月28日 22時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2015年5月12日 22時