誘拐:10 ページ11
Aの両腕を頭の上で押さえつけた。
まさか今流行りの床ドンとやらを自分がやると思わなかったが。
一方のAは、無表情。
驚きも焦りもしねぇ。なんて可愛くない女だ。
Aは口元をニタリと歪めて、こう言い放った。
『手錠がないから……なんだって?』
言い終えるかどうかのうちに、Aは膝で俺を軽く蹴った。
「……はぁ?女の蹴りなんかで倒されるほどヤワじゃねぇよ」
『……さぁ、それはどうかしらね?』
なんだ……?コイツ、こんな状況でやけに余裕があるように見える。
数時間前の一撃の動きから、俺はこいつの駆動スピードは見切っている。
それも踏まえて押え付けているはずなのに、コイツの得体の知れない自信はどこから来る?
「てめぇ……一体何を企んでいやが、る!?」
突然だった。
体の力が抜け、痺れたような感覚。
ガクリと俺が崩れる一瞬を、Aは見逃さなかった。
脚を俺の下から抜き、腹を鋭く蹴りあげると、思わず腹を押さえようと動かした右腕を逆手に捻り上げて背中で固定した。
その一連の動きのスピードたるや、先程の膝蹴りの比ではない。
コイツ、さっきは俺が気付かない範囲で手を抜いていやがったのか。
Aはうつ伏せの俺に馬乗りし、テーブルの上に置かれた箸を頚動脈の真横にピタリと突きつけた。
完全に態勢は逆転した。
そして、わざとゆっくりとした口調でもう一度言う。
『ねぇ、手錠、ないから、なんだって?』
「……チッ、」
俺は小さく舌打ちした。
「わぁった、なんでもねぇよ。」
『そう。』
Aはそれだけ言うと、背中から降りた。
俺がそれを確認し、立ち上がったところでAが俺に詰め寄る。
『あんまり、ナメないでよね?』
俺の顎を人差し指で持ち上げ、そう言う。30cm近く身長差があるはずなのに、見下ろされている気分になるのは何故だろう。
ニィ、と口の端を上げてAが嗤う。
『逃がすつもりなんてないわよ』
「……うっせぇバーカ。てめぇが痺れ薬なんて使わなきゃあのままだったんだよ。」
『気付かなかった方が間抜けなんでしょ、バーカ。
それにあれはおまじないよ。』
「はぁ?おまじない?」
『次からのご飯が少し不味くなるおまじない。
だって、もしかしたらまた薬を入れられるかもしれないって思うでしょ?』
「……」
ホントにコイツは、どこからどこまで計算ずくだ。
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Mae(プロフ) - かぼちゃポンタさん» コメントありがとうございます!!メインの2人以外にも結構時間を割いているので、そんな風に黒子の活躍(?)を見ていただけて嬉しいです笑。レス遅くなってすみませんでした! (2016年8月30日 16時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
かぼちゃポンタ(プロフ) - 黒子の締めで笑いました、はい!2見てきます!! (2016年7月26日 14時) (レス) id: b325383cfb (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - スピカ@しののんとmarvelousへの旅さん» 伏線ともいえない伏線もどきは一応張っていたのですが、やっぱりわかりにくかったですよね……すいません!黒子のほかにも謎はたくさん残してあるので、また推理しながら楽しんでいただけたなら幸いです。コメントありがとうございます!! (2016年3月30日 20時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
スピカ@しののんとmarvelousへの旅(プロフ) - まさかの、手伝いが、黒子だったとは、、、 驚きのあまり、十秒間口にポカーンてなってました笑 今まで分からなかったところがわかって、すっきりはしたけど、続きを読むのが楽しみです。 本当黒子とか思いませんでした (2016年3月30日 18時) (レス) id: 5f4212bb8d (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - 狐サマさん» 長いこと引っ張ってきた伏線がやっと表に出たので、私自身もホッとしてます笑。花宮はいい意味で期待を裏切ってくれる存在だと思ってるので、読者様に対してもそう在れたのなら幸いです。コメントありがとうございます! (2016年1月28日 22時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae | 作成日時:2015年5月12日 22時