誘拐：56 ページ14
｢……僕は、忘れたいほど辛い記憶を、忘れることはできませんでしたが｣
静かに聞いていた黒子がぽつりと言う。
｢都合よく、見ない振りをしたことはあります。
でも、大好きな記憶に未練がましく縋りついて手離せなかった。諦められなかった。
きっと多くの人がそうなんだと思います。
貴方の頭は本当に優秀なんでしょうね｣
多くの、普通の人間ができることだとは思わない。
花宮真だからできた。
俺だから記憶を捨てられた。
本当にそれだけ。
先程まで苦いような苦しいような、もしくは理解できないものを見るような顔で俺の話を聞いていたが、今は無表情の淡々とした喋り口に戻っていた。
｢完全に理解はできませんが、一応納得しました。
この先は貴方とAさん2人が決める話になるでしょうから、僕はこれで退散します。｣
質問は1つと言っていたし、これで本当に黒子は満足したのだろう。
元々は偶々Aの計画に加担することになっただけの部外者だ。
居座るような野暮な真似はせずに潔く消えるってところは評価してやってもいい。
奴は少ない荷物を持って立ち上がると、少し屈んでAの方に声を掛ける。
｢では、お2人とも、お疲れ様でした。
またどこかで｣
黒子の挨拶には返さなかった。
「また」は無い。俺は高３で、部活は間もなく引退だ。
黒子はまた忙しいバスケ漬けの日々に戻るのだろう。
淡々と、何事もなく、無表情で。
ふと逸れた視線を戻すと、そこには最初から誰も居なかったかのように、黒子は姿を消していた。
背後で病室の扉を開閉する音だけが聞こえて、あいつが出ていったんだと分かる。
そしてようやく、この病室には2人きりになった。
続く
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クロユリ＿Leia - 完結まで、楽しみにしてます！ 2019年になっていますが、いつまでも待ってますよ！ (2019年7月27日 2時) (
レス) id: cb3cd906f4 (このIDを非表示/違反報告)
花雀 - 続きが楽しみです!!! (2016年11月20日 14時) (レス) id: 7a0edb0cd5 (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - 白奈さん» 確かめてみたところ、オリジナルではありませんでしたがキーワード設定に不備がありました……ご指摘ありがとうございました！ (2016年6月15日 18時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
白奈(プロフ) - 気のせいだったら申しわけないのですが、オリジナル作品になっていませんか？ (2016年6月15日 17時) (レス) id: 37bc689230 (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - らぁらさん» そう言っていただけるととても嬉しいです！期待にそえるようにかっこいい花宮を頑張って書いていきたいと思います。コメントありがとうございました!! (2016年4月17日 21時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mae x他1人 | 作成日時：2016年3月31日 11時
