誘拐:54 ページ12
8年前、俺が小学4年生の頃、両親が離婚して父親が出ていった。
それまでは全く何の不和もなく、幼い目にも仲のいい両親だと思っていて、それなりに愛情も感じてたから俺は大層驚いたしショックを受けた。その頃は俺もまだ純粋でアホなガキだったし。
父親はある日突然居なくなって、母親に何度聞いても理由は「俺達のために」とだけしか教えてくれなかった。
子供ながらに何か事情があったのだろうとは察していたが、どうすることもできなかったし実際何もしなかった。
ただ、「親の子に対する愛情ってそんなもんかよ」って、歳を重ねるごとにそういう風に理解していった。
もしかしたら、他人を信じなくなったのはそこら辺だったかもしれない。
それから5年後、俺が中3の時に花宮誠治が殺害事件で逮捕された。
俺はニュースを見て父親だとすぐに気付いたが、特別大きな事件でもないのに俺と容疑者の苗字が同じだからといって態々突っ込んでくる奴も居なかったし、偶に勘のいい奴は居ても「優等生」の俺の脅威にはなりえなかった。
だから大した傷は受けなかった。
もう俺には関係ない人間が起こした事件。
それでも何となく調べていくうちに、再婚予定の相手とその娘、Aの存在を知った。
ーーーー…あぁ、はいはい。
成程、俺と母親を守る為とか耳障りのいいこと言って別れた後で、結局都合のいい別の女に乗り換えてたってわけね。
俺らのことは捨てて、忘れて、自分は幸せになろうとしてたとこに自業自得の罰が下ったと。
はは、ざまぁねぇな。
あーおかしい。くっだらねぇ。
と、ひとしきり嗤ってーーーー俺はここで初めて気付いた。
俺が傷付いていることに気付いた。
(……はあ?)
おい何だよ。
あんな男はもう俺の父親じゃねぇだろ。
まさか、俺は、もしかしたらいつか父親が戻って来るかもしれないと思ってたのか?
まだ愛情が残ってる可能性なんて信じてたのかよ?
ずっと、今この瞬間まで?
愕然とした。
俺は中学では既に外面の「優等生」を演じることに慣れてすらいて。
他人のことは信じない、子供だろうが大人だろうが思うままに操り、バスケ部を完全に支配して、汚く宜しく愉しくやっていたというのに。
恥ずかしくて忌まわしくて、悔しくてムカついた。
最低の気分だった、誰もいないところで胃の中のものを全部吐き出した。
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クロユリ_Leia - 完結まで、楽しみにしてます! 2019年になっていますが、いつまでも待ってますよ! (2019年7月27日 2時) (レス) id: cb3cd906f4 (このIDを非表示/違反報告)
花雀 - 続きが楽しみです!!! (2016年11月20日 14時) (レス) id: 7a0edb0cd5 (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - 白奈さん» 確かめてみたところ、オリジナルではありませんでしたがキーワード設定に不備がありました……ご指摘ありがとうございました! (2016年6月15日 18時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
白奈(プロフ) - 気のせいだったら申しわけないのですが、オリジナル作品になっていませんか? (2016年6月15日 17時) (レス) id: 37bc689230 (このIDを非表示/違反報告)
Mae(プロフ) - らぁらさん» そう言っていただけるととても嬉しいです!期待にそえるようにかっこいい花宮を頑張って書いていきたいと思います。コメントありがとうございました!! (2016年4月17日 21時) (レス) id: 56d5d2ac75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Mae x他1人 | 作成日時:2016年3月31日 11時