聴きたくて、聞きたくなくて (ページ32)

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31、ピアノページ32

｢せっかくなので、
皆さんの声を聴きたいのですが…
歌ってくれたり、します？｣

『えぇっ！？』

せっかく久しぶりに人前で、
しかも私の中で
誰とも比べられない方々の前で
ピアノを弾くのだから
一緒に音楽を作りたい。

そう思った。

｢高校の校歌なら歌えるでしょう？｣

って、少し強引に伴奏を始めた。

歌いやすいように、なるべく楽譜通りに。

気を抜くと良く言えばアレンジ、
悪く言えばリズムを乱してしまうので
皆さんの表情を見ながら
ちゃんと抑揚をつけてピアノを弾いた。

こういうとき、ピアノをやっていて
良かったなと思う。

歌っていても表情は見れるけれど、
伴奏者じゃないと、引き出せない表情もあると
思っているから。

と言うよりは、そう教えられてきたから。

人には過去があるように
音楽にも後ろがある。

その後ろがあるから、今がある。

人生も、音楽も、
言い表せない部分が存在する。

それを楽しく表現するのか、
悲しく表現するのかは、
自分自身・伴奏者次第かもしれない。

｢突然のお付き合い、ありがとうございました｣

｢本当に唐突だったね｣

｢でも楽しかった！他にも歌いたい！｣

｢楽譜あれば弾けますよ？｣

なんて、和気あいあいと過ごせるのも
私に音楽を教えてくれた両親のおかげ。