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153話:傘 ページ3

目を向けると、そこには傘を差していない(・・・・・・・・)太宰さんが居た。


(ん?)


『…』
「やぁ、元気かい?」


傘を差して居ない太宰さんはいつも通り話してきた。
どこか嬉しそうな彼に私は思わず言葉を失って、手を伸ばし、引き寄せた。


グイッ…


「おっとっと?」
『何やってるんですか!風邪引きますよ?』


私はバックから小さなタオルを取り出して、太宰さんの頭に投げつけた。
彼はキョトンとしていたが渡したタオルで髪を拭き始めた。


「...にしても雨が降るなんてね...天気予報は大ハズレだね」
『天気予報は知らないですが、大ハズレでも雨の中は歩かないで下さい。』


太宰さんとは最近まで色々あった中だ。
初めて会った時は衝撃的で、ジサツしているときに会ってしまった。
それから色々あって仲良くしてもらっている。

チラリ..と太宰さんを見ると幸せそうに渡したタオルを少し見つめていた。


『...』


(これが俗に言う雨に濡れた美しいイケメンとでも言うのだろうか?)


私にはよく分からないけれど、こういう感じなのを弟子の雄一郎から受け取った写真集か何かで見た事がある。
すると太宰さんは軽く髪を拭いたのか「洗って返すよ」と言っていた。


『別に大丈夫ですよ?私と貴方の仲ですし..』
「いや、ここは紳士としてね。レディには特別扱いだよ」


「是非甘えてくれたまえ!」と太宰さんは言っていた。
……まぁ今返して欲しい訳じゃないし、別にいいか。


(ってか濡れて外歩いていたのは貴方なんですが...?)


悶々と悩んでいると太宰さんはふいに私の手を取った。
流石にここに居るのはまずいと思ったのか近くのコンビニに足が向いた


「仕方ない、ビニール傘でも買おうじゃないか」
『...急いでるんですか?』

「嗚呼、少しね」


ケータイを家に置いてきてしまい取りに帰ろうとしたみたい。


__
_


『相合傘...』
「1本しか無かったのだよ」


急に雨降ってきたこともあり、傘は売れてしまった。
でも、1つだけコンビニに置いてあり相合傘して外を歩くことになった。


「まぁこういう日もあるさ」
『そうですね』


短く言葉を交わしながら歩いた。
...なんだか会話がない。


(異性とこんなに近いのはいつぶりかな?)


いつも通り、ドキドキはしない。
だけれど、こんな雨音が聞こえるとついなにか考えてしまう。

154話:らしさ→←152話:天気



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シグマざん(プロフ) - シアさん» コメントありがとうございます。了解しました (1月11日 0時) (レス) id: af73925dd3 (このIDを非表示/違反報告)
シア - 江戸川乱歩オチも作っていただけませんか? (1月9日 7時) (レス) id: 5afea0a2a0 (このIDを非表示/違反報告)
シグマざん(プロフ) - 冬華さん» ありがとうございます!!ひとつの事に集中するのは苦手で更新は遅くなってしまいますがとても嬉しいです! (9月18日 16時) (レス) id: af73925dd3 (このIDを非表示/違反報告)
冬華(プロフ) - 恋愛系の久しぶりに読むんですけど、話の展開に無理矢理感がなくて気持ちよく読めました!沢山の作品を同時に作ったり、アイデアを出せるシグマさん、尊敬します! (9月18日 14時) (レス) @page13 id: 62d80712bb (このIDを非表示/違反報告)
シグマ(プロフ) - raiさん» 少しずつですが頑張ります。ありがとうございます (8月15日 14時) (レス) id: af73925dd3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シグマ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp//  
作成日時:2022年9月27日 23時

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