【文スト】才能なしの政略結婚 (ページ13)

今日:15 hit、昨日:68 hit、合計:92,587 hit

13 ページ13

部屋から抜けると、私は旅館の外に向かった。
そして近くの自動販売機でお菓子を買った。

(便利だなぁ…)

チョコレートとクッキーの2つを買い、食べ歩きしながら戻った。
＿家族の目や他人の目が無いのはサイコーだ。
淡々としている思考にピッタリの生き方だと思う。

なんて思いつつ旅館に戻ると、目の前にはエリスさんが居た。

『！？！？』
「どこ行ってたのよ！探したわ！」

『え、えっと…エリス様どうされましたか？』

ｻｯ…と食べているお菓子を背中に隠してそう聞いた。
＿エリスさんが私になんの用だろう？
森鴎外か尾崎紅葉についてまわると思ったけれど、違うようだ。

「な、なんでもないわ！貴方は何を持っているの？」

『…………お菓子です。
料理が口に合わなくて…あ、森様には言ってはダメですよ』

そう言ってお菓子を見せた。
小袋に分けてあるお菓子を1つ渡すと、簡単に受けとってくれた。

「やっぱり合わなかったのね」

『はい、思ったより味が濃くて…。
いつもは薄味のものを食べていたので、私の口には合わなかったみたいです』

「そうなのね」

『あ、それぜひ頂きになってください。部屋で食べますか？』

私はそう提案した。
すると彼女は首を元気に縦にふってくれて、私は手を差し出した。

(ここは年上の私がリードするところ)

そう思いつつ差し出した手をエリスはじーっと見つめ、固まってしまった。

『……あ、私に触れたくなかったでしょうか？』
「そうじゃないわ！ビックリしただけよ！」

そう言って力強く手を取って下さった。
その小さな暖かい手は、可愛いとそう思えた。

『では、行きましょうか、エリス様』
「ええ！」