ムラサキ__《N.Ren》 (ページ12)

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ムラサキ__12 ページ12

その行動に、ざわつくギャラリー。

神宮寺がAを置いて女の方を追いかけたせいで、Aの方が振られたようにみえてしまった。

ザワつくギャラリーをよそに、気づけば俺は
咄嗟にAの手を掴んで走り出していた。

何も関係ない俺が何故こんなことをしているのか、全く分からなかった。

ただ今は、晒し者のようになっている状況からAを逃がしたかった。

そのまま俺はAを屋上へと連れてきた。
俺とAがついこの間出会った場所。

いつも通り誰もいなくて、先程とは真反対の静かな空気が流れている。

「…手、痛い…」

ポツリとAが言った。

「あっ、ごめん…」

すぐに俺は手を離す。

「いや、あのさ、俺…」

俺が自分の行動について弁明しようとした時だった。

「……どうして……どうして、こうなっちゃったんだろう」

Aはそう言うと、声を上げて泣き始めた。
初めて会った日と違って、子供のような泣き方だった。

俺は彼女のそんな弱々しい姿を見て、
自分の行動の事などどうでもよくなって、

「大丈夫、大丈夫やから」

思わずAを抱きしめ、背中をさすった。

また触らないでと怒られるかと思ったが、Aは俺の腕の中で大人しく泣き続けていた。