ムラサキ__《N.Ren》 (ページ11)

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ムラサキ__11 ページ11

野次馬たちを掻き分け、俺はAと女の所へ出ていった。

誰だあいつ、どギャラリーがザワザワし始めた。

「え…、な、永瀬くん……！？」

俺を見るなり目を見開くA。
名前を覚えてくれていたことに俺は少し安堵した。

首根っこを掴んでいる女は警戒した目で俺を睨みつけ、

「ちょっと、誰なのよ！」

と言ってきたが、そんなことはどうでもよかった。
俺は女の手を掴み、Aの首元から無理やり引き離した。

「痛っ…！ちょっと何すんの…！？」

突然のことに、女は今にも爆発しそうな様子。
怒り狂っていて、正直我を見失っているようだった。

解放されたAは、何が起こっているかよく分からないようで困った顔をしていた。

その時だった。ギャラリーが先程より騒がしくなった。

「ちょっとお前ら…これどういうこと？」

騒ぎの原因、神宮寺勇太が来た。

「ゆ、勇太………」

「なんか俺の名前出して女子がもめてるっつーから来てみたら………お前ら何やってんの？」

神宮寺はめんどくさい、と言った表情で2人に問いかけた。

「…勇太が悪いんじゃん！早くこの女と別れてくれないから！」

女がAを指さす。
俯いているA。

それを見ていた俺は、黙っていられなくなり
思わず、女に言い返していた。

「いや、それでこいつの首掴むんは違うやろ？」

「は？」

「どう考えても悪いのは男の方で仮にもこいつはあんたと同じ、いや、＂浮気相手＂のあんたよりも辛い立場やで？違うか？」

俺の浮気相手という言葉に、ギャラリーから綾瀬川さん可哀想、という声が多く聞こえてきた。

「何よ……私は、私はただっ………！」

女はその雰囲気にいたたまれなくなったのか、走って逃げてしまった。

そして、

「えっ、ちょ、おい！待てよ！」

神宮寺は、女の方を追いかけた。