story174 ページ30
寂雷「…A君、私は別に君に怒ってなどいないんだ。
ただ体の方が心配で。
違法マイクと言えど攻撃が作用するのは脳が対象だ。
だけど君の場合は呼吸困難や意識消失など明らかにオーバーすぎる症状が出ていた。
それに…“クスリ”というのは…」
考えてみればどうして…今まで先生に黙っていたのだろう。
心配をかけたくなかったから?
いいや違う…これは私が満月を忘れないための傷として誰にも言わず抱えておきたかったのだ。
戒めとして。
『あの日、…結局私は全部失っていたんです』
あんなに話したくなかった言葉が口を開けばほら、嘘のように溢れ出てくる。
私はいつだって、空っぽ。
『私の体は違法マイクを完全に受け付けない体質になったんです。
違法マイク…いいえ、ヒプノシスマイクそのものがダメだと言った方が正しいかもしれませんね。
違法マイクは正規ヒプノシスマイクの劣化版です。
全部取り合わせで作った雑な完成品。
それを通して私に伝わった音はまるで毒のように身体中を駆け巡って神経を麻痺させます。
…脳に直接的なダメージを受けるのは勿論、肺、視神経、全てに作用して呼吸困難、意識消失、一時的な視覚消失が起こるんです。
何故ヒプノシスマイクそのものがダメだ、と言ったのかと言えば正規ヒプノシスマイクは…私が“攻撃対象”の時のみ今言った症状と同じ症状が現れます。
違法マイクは私が攻撃対象ではなくてもそのノイズが鼓膜を通った瞬間、正規ヒプノシスマイクなら私に向けたノイズを聞いた瞬間、私はなんの術もなくその音の前にひれ伏すしかないんです。
抗うことも、出来ずに、』
寂雷「そんな身体で…今まで生きてきたのかい?」
『…満月が、生きていますから』
寂雷「…さっき言っていた“クスリ”というのは?」
『…これです』
私はゆっくり先生から視線を逸らし、ベッドの脇に立てかけてあった自分のバッグに手を伸ばした。
内ポケットから取り出したピンク色の錠剤を先生の手に渡した。
寂雷「これは何ですか?」
『クスリ…抑制剤です。
症状が出た時にこれを飲むと収まるんです』
寂雷「…これは、この薬はどこから処方されているものですか?
君のような症状は見たことがない上にそれに対応する薬なんて聞いたこともないのですが…」
『…わから、ないんです。
誰が私にこの薬を渡しているのか』
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lotus_r(プロフ) - 華月さん» うわぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!なるべく更新送れないようにしていきたいです(泣) (2021年12月25日 16時) (レス) @page31 id: 37f79c4fa9 (このIDを非表示/違反報告)
華月 - いつも見てます(*^^*) 無理のなさらないように頑張って更新してください! (2021年12月24日 13時) (レス) id: e87e41df15 (このIDを非表示/違反報告)
lotus_r(プロフ) - 柃。さん» コメント返信遅くなり申し訳ありませんでした!作者です!この作品ももっと更新頻度上げていきたいと思います! (2021年8月28日 1時) (レス) id: 37f79c4fa9 (このIDを非表示/違反報告)
柃。(プロフ) - 夢主ちゃんのもはや芸になってる鈍感が見ててもどかしいんですけど面白いです!これからも更新頑張ってくださいね^ - ^ (2021年8月16日 0時) (レス) id: 70c717cb52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:lotus_r | 作成日時:2021年5月4日 2時