story99 side:you ページ5
『先生、』
白い扉を開いて奥に座る先生…寂雷先生の名前を呼ぶ。
今日は以前怪我をした足の検診でシンジュク中央病院を訪れたのだ。
先生の前の椅子に座ると先生はこちらを向いてやぁ、と私に微笑んだ。
寂雷「A君。
調子はどうだい?」
『お陰様でピンピンしてます!もう全然大丈夫です!』
寂雷「それは良かったよ。
治るのはいい事だけど治ってきたからって無理はいけないからね?」
『はい!』
寂雷「一二三くん達とは相変わらず会ってるのかい?」
『あぁ……はい、まあ、…この前も家に泊めてもらって』
先生の一言で思い出される嫌な記憶。
もう……ほんとにお酒なんて二度と飲まない。
誰に何するかわからないもん、、
寂雷「あぁそういえば、」
フラッシュバックした一二三や独歩に迷惑をかけたあの日の映像の中に先生の声が雫のようにポツンと落ちた。
寂雷「ずっと聞きたかったのだけれど…
“あの日”の後遺症なんかはA君には残らなかったのかな?」
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「一二三くん達とは相変わらず会ってるのかい?」
何を思い出しているのか私の言葉に恥ずかしそうにはにかむA君を見て心の底から安心する。
A君と会わない時間はわずかだったけど癒えるはずのない傷をここまで回復させたのだ。
かなり苦労しただろう。
あの時……ぼろぼろに傷ついてそれでも彼を諦めきれず泣き叫ぶA君の姿が今でも忘れられない。
だからきっとまだ、心の奥底に二度と消えない傷が瘡蓋になって治らずにいるはずだ。
「A君。」
『はい?』
「ずっと聞きたかったのだけれど…
“あの日”の後遺症なんかはA君には残らなかったのかな?」
その言葉に終始笑顔だったA君の口角がすうっと下がり、眉がぴくりと動く。
そしてまたすぐに『もちろん、大丈夫ですよ!』と笑顔で言う。
その、たった一瞬の冷めた顔が飴村君と重なって私の心まで揺れてしまう。
「A君、私は別に君を詮索しようだなんて思ってはいないよ。
ただ、君の主治医として君の身体の…」
『先生、私はちゃんとわかってます。
先生には本当にお世話になったしそのご恩を忘れたつもりはありません。
ただ本当に…私“は”大丈夫なんです、』
「…ならいいんだ。
だけど何かあった時は直ぐに連絡して欲しいんだ
君は…大丈夫では無い時も大丈夫と言う癖があるからね、」
『…はい、先生』
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作者名:lotus_r | 作成日時:2021年3月11日 19時