【ヒプマイ】月が満ちる時に。2

story65 ページ19

『理鶯〜！！』



私はいつもの柔らかい笑顔で立っている理鶯の元へ走っていく。



理鶯｢今日のAは格段に美しいな。

…お前はそんな服を持っていたのか？｣


『いや、持っていたっていうか…買ってもらったんだ』


銃兎｢男ですか？｣


『男…というか、そこにいる方です』



不満を前面に押し出した顔で煙草を吸っている左馬刻を見て言う。

前回も左馬刻、待ち合わせの時不機嫌だった。

…なんで？

私ちゃんと言われた通り予定も空けておいたし、この前買ってもらった服も着てきたのに。

チラっと理鶯を見ると心無しか理鶯も悲しそうな顔をしている。

ん？なんで理鶯までそんなシュンとしてるの？



『り、理鶯、銃兎。どう？似合うかな？』


銃兎｢…素敵だと思いますけど｣


理鶯｢Aの可愛さが引き立っている｣


『え…！

なんかそんなストレートに言われちゃうと照れますね…！』


理鶯｢しかし、事実であるから致し方ない｣



理鶯に、ありがとう、と言って返すけど相変わらず左馬刻様はご機嫌ナナメだ。

すっごい怒ってるよ。なんで？



『あ！ほら！私お腹すいちゃったな！

早く理鶯のご飯食べたいな』


銃兎｢…その事なんですがA、貴女本当に理鶯の料理を食べるつもりですか？｣



私の傍に来て理鶯に聞こえないように耳打ちする銃兎。

顔がやけに青ざめている。

なんだろう？

…あぁ、確かに見た目はちょっとあれだよね。それは分からなくもない。



『銃兎、大丈夫ですよ。

見た目はちょっとまあ…ですけど、味はピカイチじゃないですか！ほら、イモリの__』


銃兎｢わ、わかりましたから！

もう言わなくていいです｣


『今日はどうやって理鶯の野営地まで行くんですか？』


銃兎｢はぁ…私の車です。…乗ってください｣



半ば諦めて銃兎は車を指さす。

そんなに嫌かな、あの料理。味はすごく美味しいのに。



『わかりました！…ほら！左馬刻行こう？』



左馬刻のギスギスしたムードを誤魔化すようにオーラで周囲に威嚇しまくっている彼を強制的に銃兎の車後部座席に乗せて私もその隣に乗り込む。



『銃兎、私と左馬刻後ろでもいいですよね？』



と、車に乗り込んでしまってから聞く。

窓から覗き込むように私と向かった銃兎はいいですよ、と軽く返事した。



『ありがとうございます』


銃兎｢敬語｣


『？』


銃兎｢敬語、やめてください。

貴女に敬語使われると調子が狂います｣



銃兎が照れている…？気がした。

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