虚しさ。 ページ12
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硬くなった手のひら。
ふと消えた、努力の勲章のマメ。
引退してからも、剣道の感覚は忘れられなくて、つい、毎朝竹刀を持ってしまって。
でも、持つだけじゃ、何も変わらなくて。
また、部員と、後輩達と一緒に。
なんて思いが沸き立つ。
岩泉が止めるから。
あの日、完璧に綺麗で、私の中に何もない、空っぽの状態だったのを。
岩泉が止めるから。
こうして、どんどん欲が溢れていく。
｢A、じゃーね！｣
｢おー、じゃねー｣
見つめていた手のひらを振って、いつも仲の良い二人組にさようならの挨拶を。
仲良く話して帰る二人の後ろ姿を見て、軽い嫉妬が頭をよぎる。
このまま、あの二人が完全くっついたら、どうしよう。
なんて、意味もない不安。
皆が出払った教室。
出席番号最後の方の私が、まさか新学期早々日誌を書かされるとは思っていなかった。
担任の悪意を感じる。この間の、屋上を長く使い過ぎた件について怒ってるんだろう。
もう一人の日直は仕事を押し付けて勝手に帰ったし。
運が悪い。
この調子なら、いつも一緒に帰ってる子も、もう一人で行っちゃってるかな。
暑い。
9月だというのに、雲一つない快晴で。
頬を暑く照らす太陽が、私の瞼を閉じさせる。
なんとかこじ開けようと、運動部の、グラウンドを走る声に耳を傾けながら、手で視界を覆って、目を、開ける。
カーテンは完全に開かれ、裏側から刺すように入り込む光からなんとか逃れようと、暗い影を宿す。
……なんて、格好つけた表現はどうにも私には合わなくて。
性にあわないというのはこういう事だ、きっと。
ふと息をついて立ち上がり、窓の方へ。
運動部のアップをとる姿が見えて、いいな、とか。
そうそう、少女漫画ならこんなとき、ドアがいきなり開いて放課後の教室で。
いや、気持ち悪いか。
こんな妄想してもかないっこない。
そう思いつつ、チラチラとドアに視線を送っても。
一向に、何も起こらなくて。
いや、当たり前だろ。
なんて一人でツッコむ。
あーあ、悲しい奴かよ。なんて。
さっさと帰ってしまおう、すぐにでも。
書き途中だった日誌を適当に仕上げて、本当だったら職員室まで届けるのを、教師の机の上に放り投げて、
鞄を、勢いよく持ち上げる。
……重い。
いきなり加わった鞄の重みを肩で感じながら、私にはあまり似合っていない、制服のセーターを腕まくりする。
ドアを、勢いよく開けて。
見慣れない、長身男が1人。
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー！ (2023年2月18日 22時) (
レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです！ (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ！こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます！感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります！本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね！気付きませんでした！今度検索してみますね！コメントありがとうございます！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年1月12日 17時
