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遠い国 建設ジレンマ ページ8

暖かい街灯の光に照らされた、見慣れない色をした土を足の裏に感じながら、イギリスの家の前に立つ。

私は今後の欧化政策の参考にすべく、家の外観をまじまじと観察した。

レンガ造りの壁、 カーテンのかかった窓、出入り口の右上には来客用ベル。そして私の家でもすっかり普及した、「戸」ではなく「ドア」。

ごくり……顔が熱くなり、手の平にはじわりと汗がにじむ。

どうやら私は緊張してしまっているらしい。

たかが来客用ベルを鳴らすくらいで。

……いや、この感情を「緊張」と呼ぶのは適当ではないかも知れない。正確には、「罪悪感」と呼ぶべきだろうか……

だってこんなベルを鳴らしたら、外に思いっきり響いてしまうのではないか。いいのか?夜も遅くに鳴らしてしまって。少なくとも私の家でやったら、ご近所さんの顰蹙(ひんしゅく)を買うことになるだろう。

迷いに迷った挙句、私はとりあえずドアを軽く叩いてみた。

コンコン。
ガチャ。

「えっ。」意外なほどすぐに開けてくれたので、思わず驚く。

そしてすぐに、何故だろうか強烈な違和感を感じた。

狐に化かされたようなーー化かされたことなんてないのだがーー強いて言えば、「懐かしい」とは全く反対の感情が湧いた。

しかしこの感情は一瞬で消え去ったため、あろうことか私の理性によって「気のせいだ」という極めて単純な方向に処理された。

「よく来たな、日本。ほら、入れよ。」

開いたドアに体を預けながら、イギリスはそう言って手招きする。

「…はい、お邪魔します。」

私はいつものように微笑んだ。

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作者名:藍沢悠人(ゆうひ) | 作成日時:2015年5月8日 6時

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