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掴んだままだったスマホを操作し、電話帳を開いた。
回らない頭で、スマホの画面をスクロールする。
自分は誰と話がしたいのか、分からなかった。


一瞬、五条先生の名前も目に入った。
でも今はその名前は見たくない。


そのまま指を動かし続け、漸く私の指はスクロールを止めた。


そのまま通話ボタンをタップする。


コールが何回か鳴って、一瞬ブツっという音がして電話が繋がったことが分かった。

電話口から「もしもし…」という声が聞こえてきて、何故かひどく安堵した。




『もしもし…?メカ丸?』


「美澄カ。珍しいな、何か用カ?」


『うん…』


「…どうしたんダ?』


『うんっ…』

まだ何も言っていないのに涙が目から溢れそうになってしまって。

最初の涙がこぼれてしまうと、あとはもうとめどなく溢れては目尻を伝って枕に落ちていく。



『あ…あのね、メカ丸…』


メカ丸は何も言わない。私の言葉を待つように、優しい沈黙を貫いている。



『わたしっ…



…もう、かえりたい…』




「…帰って来ればいイ。オマエはこちらの人間なんだかラ。」



『…うん…かえる…。あのね、めがまるっ…』


「あぁ…どうしタ?」


『いまっ、うっ、うまくはなせないからっ…がえっだら…はっはなしぎいてほじいっの…!』



嗚咽と鼻水が邪魔をして全然うまく喋れない。
自分でも笑えるくらいに。
短い呼吸しかできなくて、脳が酸素が足りないと騒いでいるみたいだった。


「分かっタ…。いくらでも聞ク。だから美澄、今日はもう寝ロ。」

『ありがと…わかった、ねる。じゃあね。』


そう言って通話終了ボタンをタップして電話を切った。


メカ丸と話したことで安心したのか、それとも思いっきり泣いたことで心がスッキリしたのか、どちらなのかは分からなかったが、電話をかける前より大分気持ちは楽になっていた。


スマホをベッドの端に置き、目を閉じた。


ずるずると自分の鼻水をすする音だけが、部屋に響いている。


目を閉じていると段々と眠くなってきて、夜の海の中にゆっくりと沈むように、意識を手放した。

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夢花(プロフ) - ユリ.さん» ふふふwwwそうなんですかwwwこれぞ小説のちか(((殴 メタメタァ (2021年5月7日 9時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ.(プロフ) - 夢花さん» マジで息できないですよね。(笑)終わった後息も絶え絶えになりますもんね!夢主ちゃんも呼吸困難になったと思いますが、ここで死なせてもアレなのでちゃんと息できたことにしてます。(笑) (2021年5月7日 7時) (レス) id: c519aef02a (このIDを非表示/違反報告)
夢花(プロフ) - 普通にこしょこしょは死人でますよ?だって息できないもん{笑ってるから}(・_・) (2021年5月6日 16時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ.(プロフ) - 陽菜月さん» 口から心臓はやばい!(笑)しまってしまって〜(笑)もう少し待っててくだされな!まだ本調子になれず…(;_;) (2021年4月16日 6時) (レス) id: 5035154a58 (このIDを非表示/違反報告)
陽菜月 - もう、続きをワックワック胸を踊らせながら待ってます!!(ワックワック!んあ!?ワクワクしすぎて口から心臓が!?グロイ!) (2021年4月15日 22時) (レス) id: 6820255b8b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユリ. | 作成日時:2021年4月2日 20時

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