サンタが悲劇を呼び起こす

tragedy 19 ページ19

上杉君の説明も終わり、ふと時計を見てみるとあの手紙が来てもう五十分近く経っていた。

つまり残り約十分で二回目の爆破が起こる。

次第に書斎の空気は緊張感に包まれていった。

私達は誰からも喋り出さず、黙ったまま真剣な表情で手と手を握りしめている。

聞こえるのは普段は聞こえない書斎の時計の針の音だけ。

私はただ次の爆破で犠牲者が出ないことを祈るばかりだった。

すると、突然書斎のドアが開いた。

全員がドアに目線を向けるとそこには忍がいた。

「七鬼、どうだった。」

すると忍は首を横に振った。

「どこを探しても見つからなかった。」

「つまり、爆破を事前に知っているのは俺達だけだってことか。」

上杉君が眼鏡の中央を押しながら言う。

書斎はその言葉を最後に沈黙がまた沈黙が続く。

そして時はあっという間に過ぎ、丁度一時間が経った。

が、何故か爆破音が聞こえない。

みんなも予想していたことと違い、辺りを見回した。

「爆破音が聞こえないぞ。」

すると若武の電話が鳴った。

若武はすぐに電話を出るとだんだんと真剣な表情になっていった。

かと思うと突然ソファから立ち上がった。

「黒木から中央駅の方で爆破が起こったらしい！行くぞ！！」

若武、上杉君、小塚君がまた一斉に書斎を飛び出していった。

私も一瞬ソファを立ち上がったが溜め息をつき、また座りなおした。

私も行きたいけど、小塚君に言われたから…。

私はふと忍を見て言った。

「忍は行かないの？」

すると忍は首を横にゆする。

「俺は行っても意味ないから。必要のないやつは大人しく待ってた方がいい。」

そっか、忍はみんなのためと思ってここにいるんだ。

みんなの迷惑にならないように。

「俺達は俺達で何かできることをすればいいだろ。」

「そうだね。」

私は返事をして、さっきの若武の言葉を思い出した。

中央駅って言ってたっけ。

ここからだと遠いから爆破音が聞こえなかったのかな。

すると忍が私に聞いてきた。

「手紙、来ないな。」

「手紙？」

手紙って、あの星がついてるあの手紙のこと？

「だってあの手紙、爆破が起こったと同時に来ただろ？」

そういえばそうだ。

「じゃあ、外に出てみる？」

私の提案に忍は頷いた。

私達も書斎を出て、玄関に行き靴を履いてからドアを開けた。

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