episode5 ページ6
【チリside】
「合理的じゃない、ねぇ…」
少し冷えたお茶をひと口飲み、もう一度溜息をつく。
「…Aはさ、なんでそないに強くなりたいって思っとるん？」
『なんで、ですか』
「そうや、ネモは純粋にバトルが好きやからやけど、自分はちゃうやろ？」
『そうですね……』
最後の1粒を口に運び、Aは言った。
『強いチャンピオンでいられることが、私の、唯一の個性だから、でしょうか…。』
______
せっかくやからとおばちゃんに渡された色紙にサインを書いて、店を後にした。
「はぁ〜、お腹パンパンや〜、
こんなぎょうさん食べたの久しぶりやで」
『んふふ！私もチリさんを誘えて今日はいい日です！』
澄んだ瞳でニコッと笑う彼女に、柄でもなく少し心が締め付けられた。
思えば、彼女は昔から不思議やった。
ウチは面接官に抜擢されたくらいや。今まで他人の気持ちっちゅうのは嫌でも汲み取れてしまった。
バトルでも、今相手はこうしようと思っているだろうと何となく分かるから大抵の人に勝つことが出来た。
しかし、Aとの一戦は違った。
まるで将棋を格上の相手と打つ時、楽しませるために名人がギリギリまで負けとるって見せかけて、最後にガラッと入れ替えられ、何が起きたか分からん間に勝敗が着く。そんな雰囲気だった。
せやから心底悔しいと思ったし、尊敬した。
告白された時も、今までそういう気持ちでこちらを見とったのはほんまに気づかへんかった。
あないに生涯で男女含めようさんの人に告白されてきたと言うのに、初めて告白されたかのように本気で驚いてしまった。
“言ったことは忘れるから”
内心焦りすぎていたのだろう。
今思えば普通に振ればよかったのに、
無かったことにするようあないに露骨に説得したのは、大人げなかったと思う。
『宿、もう少しですかね
…あ、そうそう。鞄貸してくださいね』
「おっ」
半ば強引に鞄を盗ると、Aはにやりと笑った。
「なー！もうちょいチリちゃんにかっこつけさしてや〜！」
『やです！約束ですから！』
そう言うと、彼女は心底嬉しそうに笑った。
「ほんま、Aは可愛いなぁ……」
ボソッとそう言うと、少し前歩いとったAは足を止めてこちらを振り向いた。
顔を見ると、辺りの寒さからか気持ちからか、それとも……
頬が少し照っとった。
『チリさ…』
「……A、Aってまだ、チリちゃんのこと好きなん……？」
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りこまる - やばい……好き (12月26日 2時) (
レス) @page24 id: 9a77c9521c (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - すっっっきぃ… (9月2日 23時) (レス) @page24 id: a311a04bdb (このIDを非表示/違反報告)
あんず - この小説が最近の生き甲斐です！続編楽しみにしてます！お体に気をつけて、更新頑張ってください！！応援してます！！ (2023年2月8日 23時) (レス) @page24 id: 05f7df07a8 (このIDを非表示/違反報告)
餅(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！この話は胸のトキメキや無双系ではなく、意地汚さやもどかしさなどの人間味を重視して書いているのでそう言っていただけて心の底から嬉しいです。是非今後もこの作品をご贔屓にして頂けたら幸いです。 (2023年2月7日 21時) (レス) @page24 id: 2288440125 (このIDを非表示/違反報告)
m(プロフ) - 初コメント失礼します。とても綺麗で人間らしい内容と構成で本当に感動しました。これからどう成長し、展開していくか、本当に楽しみです！これからのご活動も心より応援しております。お身体にはお気をつけて楽しんで作品活動続けてくださると嬉しいです！ (2023年2月5日 16時) (レス) @page22 id: 0d9b393e0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わらび餅 | 作成日時：2023年1月6日 2時
