《11》 ページ23
宗side
秋。
芸術の秋。
とは言うけれど、芸術に季節などあるわけがないのだよ。
そういう俗物どもには呆れ返るね。
ともあれ、僕はとある噂を聞いた。
＿＿＿この学院には姫君がいる
という旨の、ね。
長い黒髪に、色の違う宝石眼のような両目、しなやかで白い手足。
黒髪の1年生を寝かしつけているのをよく目撃されるようで。
それはまるで、聖母のよう…
そんな話をふと小耳に挟んで、馬鹿馬鹿しいと思わず鼻で笑ってしまったがね。
ふん、夢ノ咲学院アイドル科は女人禁制なのだから、姫君なぞいるはずがないのだよ。
居たのならそれは、大概噂話や誇張が好きな俗物どもの幻覚だろうね。
よく居るだろう？
化け物がいたと思ったら木の影だったとか、何もしていないのに扉が閉まったと思ったら風だったとか、蛇だと思ったらただの紐だったとか。
姫君の噂はどうせそういう類のものだろうし、そんなもので時間を潰しているほど僕はは暇じゃないのだよ。
そんな暇じゃない僕でも、多少の休憩が必要になる時だってある。
僕は衣装を自ら作るのが好きだからね。
昨日も新しい服を考えていて徹夜のようなことをしてしまったから、少しでも休もうとこのガーデンテラスの木陰にやってきたのだ。
ここは人目もあまりないし、木陰に座って目を瞑っているだけで落ち着くからね。
そう思って木陰に足を運んだ僕は、飛び込んできた光景に目を奪われて、足が動かなかった。
黒く長い絹糸のような髪をゆるく三つ編みにして、膝に置かれた少年の頭をそっと撫でる人影。
伏せられた瞳を縁取るまつ毛は長くもなく短くもない、けれどしっかりと上向きで綺麗で。
そよそよと吹く風にふと開いた瞳は、赤と青の宝石眼のようなオッドアイ。
そのオッドアイに木漏れ日が当たって砕け落ちて、きらきらとその人のあたりに降り注いでいた。
少し眩しそうに細められた宝石眼に手をかざして陽の光を遮った白い指は、まるで陶器のようで……
そこだけ切り取って額縁におさめたいような、そんな情景だった。
噂なんて信じていなかった。
デタラメな噂なんて信じていなかった。
けれど………………
＿＿＿僕はその時、女神に出会ったのだと思った。
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魚(プロフ) - 永久さん» ありがとうございます！！はわわわわわっ…嬉しいです…！これからも頑張った更新しますので、よろしくお願いします！ (2021年6月28日 21時) (
レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)
永久 - 続編ありがとうございます！そしていつも最高の作品をありがとうございます！最近ノスタルジアや崇拝も読ませていただき、ますます魚さんの作品が楽しみになりました！ (2021年6月26日 14時) (レス) id: 8eb18355f8 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - ねこまるさん» わぁ…！前作、前々作ともにありがとうございます！頑張って更新していきますね！ (2021年6月21日 12時) (レス) id: e0d88f5dee (このIDを非表示/違反報告)
ねこまる - 続編ー！嬉しいです！夢主君尊い…。崇拝もノスタルジアも読ませて頂いていました。どちらも私の好きな作品のひとつです! (2021年6月20日 14時) (レス) id: ccf2dbd148 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：魚
| 作成日時：2021年6月20日 12時
