続 出会うのがもっとあとだったら、きっと君に恋をしてた。【桃×青×赤】

はじまり ページ8

「桃原くんって好きな人いるの？」



半年前、バイトの同僚にそう何気なく訊いてみたのがはじまりだった。

確かその数分前、私が働いているファストフード店に若いカップルが訪れ、目の前でイチャイチャしていたのがきっかけだったと思う。

休憩室の隣に並ぶ同僚と特に共通の話題がなかったというのも、理由のひとつだった。


ほとんど無意識に、沈黙の時間の暇つぶし程度の手軽さで、私の口はそう動いていた。


「好きな人……」



突拍子もない私の問いに、彼はそう言ってこちらを見た。きょとんとした目で私をまっすぐ見てくる。



「何？ 口説こうとしてんの？」

「言葉通りの意味だよ」



顔は綺麗なものだから同僚の女子たちにちやほやされている彼を、調子に乗るなという意味を込めてじとっとした目で見返してやると、彼はふはっと吐息だけで笑った。

それから目を遠くにやって、懐かしむように言う。



「いるけど、弟だと思われてる」

「……へえ」



よくある話だ、と適当に流して終わりにしようとすると、彼は意外そうな顔で座っていた椅子をガタッと鳴らした。



「相手誰なのとか訊いてくれないんだ？」

「みんながみんなイケメンを口説こうとすると思うなよ」

「ごめんって」



笑いまじりにそう言いながら、休憩室のパイプ椅子にだらんと寄っかかって、長い足を余らせるように床に投げ出す。行儀は悪いけど、様にはなっている。


手持ち無沙汰にそれをまじまじと眺めていると、彼が片肘をテーブルについて目を合わせてきた。うわっと思わず顔を遠ざけると、面白いものを見るような目で笑われた。



「なんなの急に」

「んー、なんとなく？」



なわけあるかとその目を見つめ返していると、また笑われた。

じゃあさ、とその口が動く。




「俺が聞いてほしいって言ったら、聞いてくれる？」

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