猫かぶりの裏の顔4【奈良坂透】

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｢俺はAの直感を信じるよ。それだけろくでなしに会ってきたなら信頼できそうな相手は分かってきただろう。｣

下心を持った人は言葉や挙動に出やすい。

好感を持たれようとした言葉を過度に選ぶ。
自分の経済状況から話し始める。
断ってもしつこく説得する。
妙に身振り手振りが多い。
目が泳いだり、アドリブに弱く薄っぺらい回答が出てくる。

注意深く見れば嘘をついた人間というのは自然とボロが出るのだ。

そう思うと、あの先輩は本当に私のことがすきだったのだろう。重すぎて流石に受け止めきれそうには無かったが。


｢実は、リフォームされた一戸建てに移ることなった。引越しはまだ未定だけど｣

｢そうなの？良かったね。｣

いつまでも玲の家に留まるわけにはいかない。急ピッチで空き家のリフォームや住宅地の計画が進められている。他県からの支援なども集まっているらしい。

あまり時間のかからないうちに避難した人はまた通常の生活に順応していくだろう。

｢家が壊れた時はどうなるかと思ったけど。私も早く家に…｣

壊れた家の中には思い出が詰まっている。幸い火災は起きなかったの大体のものは残っているだろう。遺品含め、せめて持ち運べるものはとっておきたい。


｢これを、一番につたえたかったんだ。
引っ越す時がきたら必ず、すぐに迎えに行く。｣

｢うん。…うん？｣

流れで何も考えずに一度返事をして、その後疑問符を付ける。

｢一緒に住むの？私も？｣

今そのような幸せが起こるものかと信じられない。
ただ、驚きつつもサプライズのような嬉しさが込み上げる。

｢何時になるかはまだ未定だけど。それまで待ってて。｣

すっと手が頬に伸ばされる。耳にかかった髪を触り、肌に当たる手のひらが温かい。
今度こそは｢大丈夫｣とは言わなかった。


｢うん｣

微笑んで答えると、透は満足そうに手を離す。
落ち着いた波のように穏やかだ。だけど、手の触れた箇所だけは代わりに熱くなる。

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