愛されたいのは

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「私の元彼が俊くんの幼馴染みだったんです」

「あー、あの前の会社のね。
世間ってせめーね、ほんと」


なんて何でもないかのように話す北山さん。

元彼ってワード、気にならないんだ。









だいたいさっきの会話もなんなの！？

私を取られるとかなんとかってさ。

北山さん彼女いるくせに。

そんな風に考えてたら、なんかちょっとムカムカしてきて、思わずジト目で北山さんを睨む。


「何？」


とテーブルに置かれたグラスの飲み物を飲みながら こっちを見る。


「なんでもないです！」

「何怒ってんだよ。おこーー、Aがおこーー」

「小学生か！裕太みたい！」


なんか無性にムカついてバタンと扉を閉めて下へとおりていった。

それでも北山さんの余裕ぶった顔が容易に想像できて、それはそれでまたなんかムカつく。

ムカついてばっかりだな、今日は。

落ち着くために外に出て、なんかお店でも見てこよう。







数ある路面店の中でもお気に入りの雑貨屋さんや本屋さんに立ち寄った。

お店にはない雑誌を立ち読みしていると、肩をトントンとたたかれたので振り返ると誰もいない。

あれ？と思い反対側を見ると、そこに立ってたのは


「いたずらっ子太輔さん」

「ふふ、休憩中？」

「はい、太輔さんは？」

「外回り中。本屋に入るAちゃんが見えたから」


普通ならちょっと見かけたくらいなら素通りしそうなのに、ちゃんと声をかけてくれる事が嬉しい。


「久々じゃない？休憩中お店にいないの」

「え…そうですかね？」

「うん、最近よくオーナーさんと話してるでしょ。
外回りであの辺も通るからさ」


確かに…そうだったかも。


「あー、もう一人はこの人かって思った」


って太輔さんがすごく小声で言うから、なんて言ったかよく聞こえなくて。


「え？」

「んー？なんでもないよ。じゃあ行くね」


ってそのまま行くのかと思ったら、1回戻ってきて耳元で


「また終電見送ってうち来る？」


なんて超イケボで言うから、思わずブンブンって首を横に振った。


「来ないの？残念」


って、ふふって笑いながら、じゃあねってまたお仕事に戻って行った。

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