愛されたいのは

43 太輔side ページ44

*



じゃあおやすみ、と言って寝室の扉を閉め、ふぅとため息をつきソファに横になった。

随分と紳士を演じてしまったな。

本当はあのままめちゃくちゃに抱いてしまいたかったけど、半分ヤケになってるようなAちゃん。

なんかそれは嫌だなって思った。

Aちゃんの心にはもう一人いる。

そいつをきちんと追い出してからでないと。








昨晩、帰宅して簡単な食事を済ませ、シャワーもしてあとは寝るだけって時。

少し読書をしているとLINEが鳴った。


渉Aさんが千賀のバーにいる。
マティーニとか飲んでるけど、大丈夫だと思う?

太輔すぐ行くから見張っておいて


着替えてすぐに家を出た。

ここから近くてよかった。







店に入ると渉とAちゃんは店の端と端に座っていた。

え、何この距離感。

カウンター越しだけどこの間にいる千ちゃんが不憫に思えてきた。

マティーニをチビチビ飲んでるAちゃんの顔は、いつものふにゃっとした可愛らしい感じではなく、

眉毛を一直線にして、なんだか半分怒ってるような顔してる。





マティーニを勝手に下げて水をあげたら反抗的な態度。

話しかけても無視するし。

なんだか今日は初めて見る一面だな。

この面倒くさい感じもかわいいと思ってしまう。

帰ろうって声かけても返事もせずに立ち上がるし。

これは相当イラついてるな。









駅に着いたのに、Aちゃんはまったく改札を通る気配がない。

一体何を考えてるの。

このまま電車に乗らなかったら、それからどうなるかわかってる？

俺と一緒に一晩過ごすっていう1択しか与えてあげないよ？

するとAちゃんはアーモンドのような大きな目で、俺の目をまっすぐ見つめた。

そんな風に見ないでよ。

時が止まって永遠みたいに感じるでしょ。







本当に困った子だね、君は。




.

44→←42

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す