真昼の月 ［大／宮］

8 空の絵 和 ページ8

「僕、トイレに。」

席を立つと、
こういう所は、トイレって言わねぇんだよ。

小さな声で潤くんに笑われた。
一人で大丈夫かい？と、昌行さんが聞いてくれ、はい。と笑って答えた。

はぁ〜。
息つまるよ。

レストランを出ると、大きな空の絵が飾ってあった。
確かロビーにも大きな空の絵があったような気がする。吹き抜けの、階下を身を乗り出して覗く。

わぁ。凄い。

各階のエレベーターホールに、同じサイズの絵がみえる。

ここは、夕焼け。

ここは、雨。

ここは、雪♪

ここは、入道雲♪

ここは？・・・夜空？
客室が続く静かなフロアにある空は、真っ黒な絵だった。
なんか、落ち着く。
絵の前に置かれているソファーに膝を抱えて座った。

ポーン♪

一台のエレベーターの扉が開いた。
降りてきた一人の男性。

夜空の絵と僕との間に立つと、腕を組んで見つめていた。

そのまま、数歩下がり、

「・・・やっぱり。月が欲しいな。」

と、呟くと、ポフッと、僕の横に座った。

ん？この人。今朝の。
ソファーに僕が座っていたことにやっと気付いたのか、失礼。と言って、ふにゃっと笑った。

・・・。

何だろう。この人。
かっこいいのに、不思議。

「・・・？んっ？君！？
ああ！！びっくりした！ついに幻覚見たかと思っちゃったよ♪
君、今朝も会ったよね♪また会えて良かった！」

急に大きな声を出されて、ビクッとなってしまった。

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